2012 Fiscal Year Annual Research Report
沿岸域の人工光が食物連鎖を通じて海洋生態系に与える影響
Project/Area Number |
12J02193
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
平田 和彦 北海道大学, 大学院・水産科学院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 人工光 / 海鳥 / 採餌行動 / 繁殖生態 / 海洋生態系 / 漁業 / バイオロギング |
Research Abstract |
海洋の高次捕食者である海鳥は、海洋生態系に対して極めて大きな影響力を持つ。漁灯を用いた漁業が海鳥の採餌行動や、ひいては個体群動態にまで影響を与えているとすれば、捕食や競争を通じて他の海洋生物の個体数や密度を変化させるなど、同所的に分布する水産資源を含む海洋生態系全体にまで影響するだろう。水産資源の持続的な利用には、海洋生態系への影響に配慮した適正な漁業の展開が必要だが、漁灯が海鳥を介して海洋生態系に及ぼしうるこれらの影響については検討されてこなかった。本研究は沿岸域の人工光が海鳥に与える影響について得られるエネルギーから繁殖成績まで評価し、沿岸域の漁灯への海鳥の誘引機構を食物網の観点から明らかにすることを目標としている。漁灯を用いた漁業が盛んな津軽海峡で繁殖する海鳥として、青森県大間弁天島で繁殖するウミネコを材料とした。2012年度は、ウミネコ繁殖個体の人工光の利用の有無を明らかにする手法として、ジオロケータおよびGPSデータロガーの実用可能性を確かめるため、ウミネコにこれらの機器を装着した。ジオロケータの照度記録機能により、夜間に人工光の周辺にいるかどうかを知ることができた。また、同じく水切り機能により、着水と飛翔(足が水中にない状態)とを繰り返す行動を検出することができ、夜間の活動性を知ることができた。夜間に活動し、かつ人工光の周辺にいると推察される例が複数個体から得られ、その成果を日本バイオロギング研究会第8回シンポジウムでポスター発表した。一方で、GPSデータロガーについては、技術的な問題から起動や記録に失敗する例が相次ぎ、前述のようにジオロケータから人工光を利用した夜間採餌行動を検出した時間帯において、一度も位置情報を得られなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
得られたデータは結論を出すには不十分であったが、具体的な問題点や実現性を把握できた点で、2年目に向けて十分な準備ができた。
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Strategy for Future Research Activity |
1年目と同様に、ウミネコ繁殖個体にジオロケータとGPSロガーを装着し、人工光を利用した夜間採餌行動の頻度と光源の特定を進める。漁灯や漁港の外灯を用いた夜間採餌により、海鳥がカロリーベースでどの程度の利益を得ているのか、漁船と岸壁からの直接観察によって明らかにする。夜間採餌頻度の異なるつがい間で、雛に与える餌の種構成や給餌頻度、繁殖成績を比較する。
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Research Products
(11 results)