2012 Fiscal Year Annual Research Report
平面四配位構造を有する遷移金属酸化物に着目した新超伝導体材料の探索
Project/Area Number |
12J02363
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
池田 愛 東京農工大学, 大学院・工学府, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 酸化物高温超伝導体 / 平面四配位構造 |
Research Abstract |
銅酸化物高温超伝導体ではd^9の電子配置が基本となっているが、d^9電子配置を有する酸化物は稀であり、銅酸化物以外ではNi^<1+>のLaNiO_2が数少ない例のひとつである。Ni^<1+>を含むLaNiO_2の合成は容易ではない。ペロブスカイト構造LaNiO_3を低温水素還元することで、LaOレイヤから酸素を剥がし、Niのまわりに酸素が平面四配位したNiO_2面がc軸方向に交互に積み重なった無限層構造LaNiO_2が得られる。合成の特殊さから、詳細な物性はわかっていない。本年度は、無限層構造LaNiO_2の超伝導化を目的として研究を行った。塗布熱分解法を用いてLaNiO_3薄膜を合成し、それを低温水素還元することでLaNiO_2薄膜を作製した。水素還元を行うことで、金属的なLaNiO_3から半導体的なLaNiO_2へと、構造並びに電気的特性が変化した。得られた薄膜は、無限層構造のa軸配向とc軸配向が混じっている。LaNiO_2の面内格子定数と近い格子定数を持つ基板上ではc軸配向が、反対に、遠い格子定数を持つ基板上ではa軸配向が優勢となり、これまで単一配向膜は得られていない。しかし、様々な基板上に作製したLaNiO_2薄膜の電気抵抗率は、むしろ、出発物質であるLaNiO_3との格子整合基板上で最も低くなった。これはLaNiO_2薄膜の電気的特性が、出発物質であるLaNiO_3薄膜の結晶性並びに電気伝導特性に大きく依存することを示唆している。また、LaNiO_2のNiO_2面の酸素欠損は電気伝導特性を著しく劣化させることが予想される。LaNiO_2を酸素雰囲気で加熱すると、LaNiO_3へ反応が容易に戻るため、LaNiO_2の微妙な酸素量の制御は難しい。そこで、LaNiO_2の酸素欠損を抑制する目的として、出発物質LaNiO_3に酸素をフルに詰め込むことを試みた。結晶化温度850℃から酸素中、10時間かけて徐冷し、LaNiO_3薄膜を作製した。それを還元したLaNiO_2薄膜の電気抵抗率は、650μΩcmまで低下し、約230K以上で金属的ふるまいを示した。LaNiO_2の金属的ふるまいを観測した例は初めてである。出発物質への十分な酸素導入が還元後のLaNiO_2の酸素欠損抑制につながったと推測される。この結果はLaNiO_2がモット絶縁体ではないということを示唆する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まだ最終目的であるLaNiO_2の超伝導化は達成されていないが、よりLaNiO_2の導電性を高める研究指針がわかってきており、同時に、新たに検証するべき課題が具体的に明らかになってきているから。
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Strategy for Future Research Activity |
LaNiO_3からLaNiO_2を得るトポタクティックな還元反応を推し進めるには、これまで、水素ガスや強還元剤であるCaH_2やNaHを用いるなど、必ず"水素"を用いてきた。その為、最終的に得られるLaNiO_2に水素が含まれる可能性が生じてしまう。そこで、水素を全く含まない新しい還元方法として、ニッケル還元を行う。具体的には、LaNiO_3薄膜の上にNi金属膜を蒸着し、それを真空封入し加熱する。この方法では、水素を全く含まないため、構造中に水素が混入する可能性を排除できる。
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Research Products
(3 results)