2012 Fiscal Year Annual Research Report
ペクテノトキシン類の生理活性部位およびその作用機構の解明を目指した合成研究
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12J02473
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
鈴木 悠記 北海道大学, 大学院・総合化学院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ペクテノトキシン2 / 構造活性相関 / ポリエーテル / マクロライド |
Research Abstract |
当該年度は、ペクテノトキシン類が癌細胞増殖活性を発現するために必要である部分構造の特定を目的とした。ペクテノトキシン類はアクチンに直接作用し、その脱重合活性を抑制することで活性を発現すると推定されている。まず、これまでに合成したペクテノトキシン2とその標的タンパクであるアクチンとの相互作用を解析する手法を確立することとした。今回はCD測定及び表面プラズモン共鳴測定によりペクテノトキシン2とアクチンの相互作用を調査した。しかし、期待していた相互作用は観測されなかった。アクチンは重合と脱重合を繰り返してポリマーを形成し、このアクチン自体の動的挙動により今回の測定法では解析が困難であったことが要因と考えられる。そこで、種々のアナログ化合物を合成し、細胞に対する活性試験から造活性相関研究を行うこととした。アナログ化合物の設計は、Raymentらによるペクテノトキシン2とアクチンとのX線結晶構造解析を基とした。このX線結晶構造解析でペクテノトキシン2が活性を発現するために重要な官能基の推定がされており、活性に重要とされている官能基を1カ所だけを化学修飾したアナログ化合物を合成した。また、ペクテノトキシン2は34員環マクロラクトン構造をもつが、この大員環部分を切断した鎖状化合物の合成も行った。これら2種類のアナログ化合物では予想通りに活性は失われ、今回化学修飾した部位が活性の発現に重要であり、かつ、活性には大員環構造が必須であることが明らかとなった。また、大員環構造を保持したまま他の部分構造を単純化したアナログ化合物についても合成し、同様に活性評価を行った。これらに関しても活性は完全に失われるということが明らかとなった。今回の結果から、ペクテノトキシン2が活性を発現するためには大員環構造が保たれていること、また、ほぼ全ての官能基が保持されている必要があることが示唆された。'
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
該当年度では、ペクテノトキシン2のアナログ化合物を種々合成し、その活性評価を行うことを達成した。ペクテノトキシン2とアクチンの相互作用の解析法については確立することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで、『活性の発現にはペクテノトキシン2の大員環構造の保持が必須であり、その大員環構造上に位置する官能基はアクチンに対して適切な配向をとることが必要であると示唆された。一方でペクテノトキシン2の化合物としての安定性に着目すると、酸に非常に弱くスピロアセタールが異性化してしまう性質をもっている。そこで、次の標的アナログ化合物はスピロアセタールの酸素原子を炭素原子に置き換えたものとした。これにより、ペクテノトキシン2の構造はほぼ保たれ、かつ、必須と考えられる官能基も全て揃うこととなり、その活性は保持されることが期待される。また、問題であった化合物自体の安定性の確保や合成の簡略化も期待される。ペクテノトキシン2とアクチンの相互作用を直接的に観測することはできなかったため、今後はアナログ化合物の合成により構造活性相関研究を行うこととした。
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Research Products
(1 results)