2012 Fiscal Year Annual Research Report
予測的な読みにおける推論情報の活性化と心的表象への符号化プロセスの解明
Project/Area Number |
12J02481
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
小林 真悠子 筑波大学, 大学院・人文社会科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | リーディング / 英語教育 / 知識ベース推論 |
Research Abstract |
本研究の主な目的は、EFL学習者の英文読解における、知識ベース推論の生成プロセスを解明することである。平成24年度の研究においては、2つの実験を通じて読み手の心的表象の精緻化と読み手自身の背景知識を基にした知識ベースの推論の活性化を検証した。 1つ目の実験の目的は「テーマが類似したアナロジー提示による文章理解への促進効果」を検証することであった。実験では、文章の表層的な意味は類似しないが、因果的に類似したアナロジーを実験材料として用いることで、学習者が2つの領域間に共通するテーマを見出し、それを理解に活用するかどうかが測定された。その結果、読解時間のデータから学習者の熟達度に関わらず、後に読んだターゲットテキスト読解時に、先に呼んだベーステキストの情報が検索されていることが分かった。一方、筆記再生課題のデータからは、熟達度の高い学習者のみがベーステキストを手がかりとして多くのターゲットテキスト情報を再生できていることが示された。2つ目の実験では、「EFL学習者による知識ベース推論の活性化」に焦点を当てた実験を行った。本実験では、実験材料として知識ベース推論が連想される文脈を用い、推論一致ターゲット語と推論不一致ターゲット語に対する語彙性判断課題を行った。また推論語を手がかりとした、手がかりつき筆記再生課題も同時に行った。詳細な結果については現在分析中であるが、全体の傾向として推論一致ターゲットは不一致ターゲットやフィラー語よりも反応時間が早く、EFL学習者は読解中に知識ベース推論を生成している可能性が強く示された。 研究発表活動としては、夏の全国英語教育学会愛知研究大会にて、1つ目の実験の成果を報告した。また、昨年度に実施した「EFL読解におけるアナロジー転移:類似性タイプと因果性の役割」の研究成果をまとめた論文が、全国誌(ARELE)に採択された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
学習者が英文を予測しながら読む過程における、読み手の心的表象の精緻化と、読み手自身の背景知識を基にした知識ベースの推論の活性化のプロセスを解明するにあたって、5つの実験を行った上でそれを包括的にまとめることを計画していた。24年度においては、計画通り2つの実験を実施することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまでに行ってきた5つの実験の成果を統合し、多くの理論研究の文献を参照した上で、予測的な文章読解プロセスの一連のメカニズムについて文章化していく予定である。
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