2012 Fiscal Year Annual Research Report
食品成分による脳腸相関活性化を通じた脳神経系制御に関する研究
Project/Area Number |
12J02731
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
門岡 桂史 九州大学, 農学研究院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | Caco-2 / カルノシン / BDNF / DNAマイクロアレイ |
Research Abstract |
本研究では、食品と生体との接点としての腸管に焦点を当て、食品による腸管の活性化とそれに基づく腸から脳への情報伝達の亢進、つまり、食品による、脳腸ペプチドを介した脳腸相関の活性化とそれによる精神神経系制御の可能性を明らかにすることを目的として研究を行っている。これまでに、カルノシン処理を行ったCaco-2細胞の培養上清が神経細胞であるSH-SY5Y細胞を活性化することを明らかにしており、昨年度においては、カルノシンの腸管における機能性について、主にCaco-2細胞を使ったin vitroの系を用いた評価を進めた。まず、カルノシン処理をしたCaco-2細胞の培養上清の神経細胞活性化効果に着目し、カルノシンのBDNF以外の神経栄養因子の発現に対する効果を検証した。その結果、複数の神経栄養因子についても同様に発現の増強が認められた。以上の結果から、カルノシンはCaco-2細胞の広範な遺伝子の発現に影響を及ぼしていることが予想された。 そこで、DNAマイクロアレイ法により、カルノシンにより誘導されるCaco-2細胞における遺伝子発現変化の網羅的な解析を行った。その結果カルノシンは、Caco-2細胞において、栄養因子応答、トランスポーター、筋肉収縮等の機能を有する多くの遺伝子の発現に影響を及ぼすことが明らかとなった。その中で、脳腸相関を規定しうる液性因子に焦点を当て、その遺伝子発現変化を定量qRT-PCR法により検証した。その結果、カルノシンは、Caco-2細胞において、エンドセリン、コレシストキニン等を含む多くの液性因子の発現を増強していることが明らかとなった。 以上の結果から、食品として摂取されたカルノシンは、腸管上皮を活性化し、多様な液性因子の発現増強を通じて全身性に様々な影響を及ぼしうることを明らかにすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度計画した腸管由来BDNFの腸管に対するオートクリン効果及びパラクリン効果の解明については、腸管由来BDNFが非常に微量であったことから、明らかにすることができなかった。しかしながら、DNAマイクロアレイ法によってカルノシンが非常に広範な遺伝子の発現に影響を及ぼすことが明らかとなった。このことから、カルノシンは腸管の活性化を通じて全身性に影響を及ぼしうると共に、腸管に対しても影響を及ぼしうることを明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は、今後DNAマイクロアレイ法によって得られた結果についてより詳細な検証を行うと共に、カルノシン以外の食品成分についても昨年度構築したIN Cell Analyzer 1000を使ったハイスループット評価系を用いてスクリーニングを行う。
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Research Products
(5 results)