2012 Fiscal Year Annual Research Report
発達環境に影響を受ける社会性情動形成のメカニズム解明
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12J02754
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
妹尾 綾 東京農工大学, 大学院・工学府, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 発達 / 社会的相互作用 / 行動 / 感情・情動 / 発達障害 / 非言語コミュニケーション / 対人関係 |
Research Abstract |
本研究は、社会性発達障害の定量的診断法及び療育法の開発を目指し、【(1)ヒトにおける臨床研究】、【(2)動物モデル研究】の2課題において、生体および環境の多種類の客観的情報の検知・抽出システムとアルゴリズムの開発を試みた。 【(1)ヒトにおける臨床研究】行動・生理の非侵襲定量指標に基づく精神発達診断の技術開発を目指し、アスペルガー症候群児(ASD)8名にご協力頂き、未・既知他者へ示す社会行動と体温、脳波の統合処理により情動特徴の抽出を試みた。未知女性、男性、主治医、母との面談時、可視・赤外画像が捉えた行動・体温と脳波の相関構造と場面推移について、BOUQUET法(senoo et.al., Koshiba et.al.,2011)を用い可視化し評価した。TDS群の特徴として、i)未知男性との対面場面以降の体温上昇、i)母親との対面場面での相手への自発的接近、頭部動き、脳波Czβ、Oβ波の増加が示された。また、TDS群は場面毎に行動・生理指標が大きく変化したが、ASD群は場面依存性の変化が少ない行動パターンを示した。これらの結果より、BOUQUET法によりASD、TDSの社会場面依存的な応答の特徴を統計的に識別できた。 【(2)動物モデル研究】コモン・マーモセットを対象とし、同世代間における社会性刺激が発達に応じた情動行動の獲得に及ぼす影響の検討と行動発達に相関する生理指標の探索を目的とした。BOUQUET法を適用し、新規個体との対面時における情動行動の変化について発達を追って解析した。生後40~200日齢の発達初期に同世代間のインタラクションが豊富な群(early)は多動、威嚇・緊張行動、インタラクション不足群(late)では不動傾向を示した。200日齢以降にlate群に対して同世代間インタラクションを行ったが、不動傾向が保存され、生後40~200日齢に高感受性期が存在する可能性が示唆された。また、関連する生体分子指標として、対面直後の血糖が有用である可能性が示された。この結果は、ヒト小児において生後発達期の同世代間社会学習における臨界期の存在を示唆するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
霊長類コモン・マーモセットの社会心理発達研究について、注意深い日常の観察とケアが社会的環境を実験的に統制し、研究室の学生13名の協力を組織し、行動実験、データの解析を含めて研究を行い、1年以上にわたり、尿試料(モノアミン分析)、血糖値の計測を実施し、その成果を神経科学会で発表した。さらに、ヒトにおける臨床研究にBOUQUET法を応用し、アスペルガー障害児の対人応答における適応障害を、ビデオ画像、熱画像カメラのデータから定量的に特徴づけることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までに実施したアスペルガー障害児の対人応答場面における情動行動、脳波、体表温度、生体内分子マーカーの定量的統合解析を論文化する。さらに、民間の発達障害者支援教育団体の協力を得て、発達障害療育の効果について、情動行動及び生理動態の変化を経時的に追跡しており、10-20例程度以上の知見を元に論文報告を目指す。 また、動物モデルを対象とした研究においては、幼児期コモン・マーモセットにおける同士間社会性インタラクションが及ぼす影響について論文化するにあたり、すでにn=8の行動および生理指標のデータ抽出・解析がほぼ完了しているが、より信頼性の高い結論を導くため、実験個体を補充し引き続き実験を行っており、年内に論文化することを目指す。
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Research Products
(8 results)