2012 Fiscal Year Annual Research Report
転写調節因子Ifrd1を標的とする生活習慣病の新規薬物治療法開発
Project/Area Number |
12J02846
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
中村 由香里 金沢大学, 大学院・自然科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | Ifrd1 / 低酸素ストレス / Wnt/β-cateninシグナル / 肥満 / 脂肪細胞 |
Research Abstract |
本年度は、主に前駆脂肪細胞株3T3-L1細胞を用いてIfrd1による脂肪細胞分化抑制メカニズムの解明を試みた。 初めに、3T3-L1細胞に各種ストレスを曝露後、Ifrd1の発現を検討した。その結果、低酸素ストレスにより、Ifrd1発現の著しい上昇が確認された。次に、肥満モデルマウスから各組織を摘出し、Western blotting法によりIfrd1の発現を検討した結果、白色脂肪組織でIfrd1の発現上昇が認められた。しかしながら、褐色脂肪組織、肝臓、膵臓等の組織ではIfrd1の発現に変動は見られなかった。次に、Ifrd1を安定的に発現させた3T3-L1細胞を作製し、分化誘導後、oil red O染色および脂肪細胞分化マーカーの発現を解析した。その結果、Ifrd1安定発現3T3-L1細胞では、Controlに比べOil red Oの染色性および脂肪細胞分化マーカーの発現は有意に低下していた。そこで、脂肪細胞分化を負に制御するWnt/β-cateninシグナルに対するIfrd1の影響をLuciferase assayにより検討した結果、Ifrd1はWnt/β-cateninシグナルを増強することが判明した。また、低酸素ストレス負荷後の3T3-L1細胞および肥満モデルマウス白色脂肪組織の核画分において、Ifrd1とβ-cateninの相互作用が確認された。以上の結果より、脂肪細胞においてIfrd1は低酸素ストレスにより発現が著しく上昇し、Wnt/β-cateninシグナルを増強することにより脂肪細胞分化を抑制する可能性が示唆された。 これらの研究成果は、肥満とそれに起因するメタボリックシンドローム患者数増加が深刻な社会問題化している現代の先進社会において、その新たな予防および治療法確立につながる非常に意義あるものであると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
培養細胞株を用いた実験に関しては、計画以上の成果を出すことができ、Ifrd1による白色脂肪細胞分化抑制メカニズムをある程度解明することができたから。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、白色脂肪細胞だけでなく、褐色脂肪細胞に発現するIfrd1のエネルギー消費との関連性についてもin vitroおよびin vivo実験系を用いて明らかにしていく。そして、肥満やメタボリックシンドロームに対する予防や治療に関する新規理論構築を目指す。
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Research Products
(5 results)