2012 Fiscal Year Annual Research Report
体肢協調運動における知覚と姿勢の関係:知覚‐姿勢‐体肢の関係の定量分析とモデル化
Project/Area Number |
12J02928
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Research Institution | The Graduate University for Advanced Studies |
Principal Investigator |
児玉 謙太郎 総合研究大学院大学, 複合科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 身体運動 / 協調 / 自己組織化 / 力学系アプローチ / HKBモデル / 再帰定量化分析 / 体肢-姿勢 / 知覚 |
Research Abstract |
【具体的内容】 申請者は、これまで指のタッピング運動について、体肢間協調実験のパラダイムで体肢の安定性と知覚の関係について実験的に検証してきた。先行研究では、身体運動の生成について自己組織化の理論からアプローチするDSAの枠組みで、体肢間協調の組織化、安定性、定性的変化などが実験的に検証され、モデル化が行われてきた。DSAでは、個人内システムや個人間システムにおいて、体肢間協調運動(指や脚、振り子を宙で振る課題を行う)が自己組織化の原理に従うかたちで組織化し、安定性を変化させることなどが示され、個人内システムと個人間システムで同様の自己組織化が働くとされてきた。しかし、DSAの枠組みでタッピング実験を個人内・個人間で実施した研究は存在しないため、申請者は、これまで、個人内システムと個人間システムにおいてタッピング実験を行い、比較してきた。 【意義・重要性】 その結果、今までDSAで提案されてきたモデルでは説明できない結果が得られ、それらは従来のモデルを再考する契機として意義のあるデータと考えられる。そのうち、本研究では、とくに個人内システムにおいて、逆位相タッピング条件で運動が安定したという発見に着目し、研究テーマを設定し、体肢協調運動における体肢と姿勢の協調、および、それを支える知覚メカニズムについての検討を行っている。先行研究では、知覚と姿勢制御の関係、知覚と体肢協調の関係、体肢協調と姿勢の関係については、それぞれ研究されてきたが、これら体肢-姿勢-知覚の関係に焦点を当てた研究は存在しない。よって、本研究で、この3者間の関係を明らかにすることは重要だと考えられる。1年目では、体肢-姿勢-知覚の関係を捉えるべく実験の準備、データ収集を行った。それらの実験では、当初の仮説を覆すような結果、別の観点から実験データを説明できるような新たな仮説の立案につながる結果が得られている。現在、当初の仮説と新たな仮説の両面からアプローチし、実験を重ねている段階であり、その一部は学会での発表が予定されている。今後、仮説を明らかにすべく実験データの収集、およびデータ解析、データを説明するモデルの提案に向け、研究を継続しながら、得られた結果については、学会や論文などのかたちで随時発表していく計画である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
申請時は、研究(1)(実験の実施)、研究(2)(データ解析)、研究(3)(モデル化)の工程が計画されていたが、当該年度の実際の成果としては、研究(1)の予備実験、研究(2)の解析手法の検討、研究(3)のモデル化に向けての理論的考察、というレベルまでしか達成できなかったため、本来なら「現在までの達成度」としては「(4)遅れている」にすべきかもしれない。しかし、予備実験で今までの仮説とは異なる方向性の新たな仮説につながるデータが得られたこと、その仮説の分野への影響が大きいと予想されること、研究(2)・(3)における準備状況を加味し、次年度の活動へのつながりを踏まえ、(3)「やや遅れている」と自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
・問題点 申請時の仮説を支持する結果が得られていない(予備実験の結果から得られそうにないと判断されている)。 ・対応策 その理由として、 1)仮説検証方法である反力操作の方法が適切でなく工夫が充分でなかったため 2)仮説そのものが間違っているため(新たな仮説の方向で検証) の両面から、今後は慎重かつ迅速に対応し、成果を出す(現在、新たな仮説を支持する予備データは収集できている)。
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Research Products
(3 results)