2012 Fiscal Year Annual Research Report
電子-フォノン輸送方程式の同時非線形解法の開発とメゾ構造材料への応用
Project/Area Number |
12J03080
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
正尾 裕輔 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | フォノン / ナノスケール熱伝導 / 熱電変換 / Boltzmann輸送方程式 / 格子動力学法 |
Research Abstract |
今年度の研究目標は以下の3点であった: 1、格子動力学(LD)法によるポテンシャルが既知であるバルクな結晶のフォノン物性の計算 2、緩和時間近似(RTA)を使わないフォノンBoltzmann輸送方程式(BTE)解法の開発 3、RTAを用いたフォノンBTEと電子BTEの連立計算プログラムコードの開発 1での研究それ自体には新規性はなく、今後の研究活動の技術的な基盤をつくることを目的とした。米国Carnegie Mellon UniversityのMcGauhey准教授が運営する研究室のサポートを受けながら、上記の目標を達成することができた。 2では現在広く用いられているRTAを使用しないNon-RTA法の開発に焦点をあて、これは我々の研究室で開発してきた計算手法をアップデートしたものである。RTAは局所平衡を仮定し、そこへ向かって分布関数を時間発展させる近似であり、非平衡度が大きくなる高Knudsen数の状況下では適用できなくなる可能性がある。Non-RTA法では上記のような仮定を前提とせず、そのため非平衡度の高い状況からの分布関数の時間発展を追跡することが可能である。 非平衡度の高い状況から緩和現象をNon-RTA法及びRTA法の双方でシミュレートし、その分布関数とエントロピーの変化を比較した。エントロピー増大則を考えるとエントロピーは時間に対し単調に増加するはずであるが、RTA法ではそれに従わない。このことは強い非平衡下でRTA法は適用できないことを示している。 また上記のふたつの研究と並行し、3に関する研究も行った。ここでは電子・フォノン双方ともRTAを使用したBTE解法を採用し、電気伝導率と熱伝導率をシミュレートすることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、これまでに行ってきたフォノン輸送シミュレーションをより具体的な物質を想定し実行するために、格子動力学法を導入することが第一の主要な目的であった。それを達成し、さらに得られた結果を用いてフォノン輸送のシミュレーションを行うことができ、計画通りの進展であると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はフォノンのBoltzmann輸送方程式だけでなく、電子の同方程式との連立解法を目指す。これまでそのテスト計算を行ってきており、主要となるスキームの骨組みは完成している。フォノンー電子輸送方程式の連立解法により、ゼーベック係数、熱伝導率、電気伝導率を求め、それらの値より熱電変換性能指数ZTを計算するプログラムコードの開発が最も主要な目標である。そのプログラムを用いて、熱電変換素子の最適なメゾスケール構造の提案を行う。
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Research Products
(5 results)