2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J03138
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
田中 秀幸 立命館大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 確率微分方程式 / 数値解析 / 数理ファイナンス |
Research Abstract |
確率微分方程式(SDE)に対する離散時間近似理論周辺について、いくつかの結果を得て、発表済みもしくは論文執筆中である。具体的には以下に述べる三つのテーマについて取り組んだ。 1.SPDE,BSDEの数値計算:偏微分方程式にノイズを加えたモデルは、無限次元の確率微分方程式(SPDE)とみなすことができる。SPDEの数値解析では、時間離散化・空間離散化・射影などの近似の誤差解析が必要とされる。しかしながら、有限次元の通常のSDEとは異なり、係数に非有界作用素がいるため誤差解析が非常に複雑となることが知られている。本研究では、ある特殊な線形SPDEに対しての双対公式を与えることで、ある程度一般のSPDEの近似に対して誤差評価を与えることを可能にした。双対公式は、誤差項の評価で見通しの良い式変形を可能にし、具体的な収束速度の導出をする役割を果たした。この双対公式による誤差解析法は、後退確率微分方程式(BSDE)の枠組みでも利用できることが議論されている。 2.SDEの期待値計算の格子上での実装法:SDEの数値計算ではモンテカルロ法が扱いやすく実装も容易であるためよく使用されている。一方でモンテカルロ法は計算負荷が高く、一部の応用対象(アメリカンオプション)では適用することが難しい。本テーマでは、特殊な格子上での計算により、モンテカルロを用いずに実装する方法を提案した。現在、研究成果は論文として投稿中であり、出版を目指して適宜修正を加えている。 3.小さなパラメータを持つSDEの近似法:ファイナンス等で現れる係数に小さなパラメータを持つ特殊なSDEに対して、離散時間近似法と漸近展開を複合させた手法を提案した。研究成果の一部は論文誌に投稿中である。また、理論のさらなる拡張についても議論を続けている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画立案時の目標であった確率微分方程式、特に後退確率微分方程式についていくつか数学的な結果を得ている。しかしながら、研究論文にまとめられる水準にまで議論は進んでいない。 一方で、ある特殊な確率微分方程式の数値計算方法について、当初は想定していなかった理論的・実務的な進展があり、論文を執筆した。この点については、元々の計画を上回った成果を得ている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度では、現在執筆途中の論文を完成させることを目指し、より深い研究を進めていきたい。具体的には、1.SPDEについての数値計算の研究成果をまとめること、2.小さいパラメータを持つSDEに対する数値計算法の高度化の2点について研究論文を完成させ、論文誌に掲載されることを目指す。また同時に、学会等での研究成果の発表も積極的におこなっていきたいと考えている。
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Research Products
(6 results)