2013 Fiscal Year Annual Research Report
生体内の機能を維持した血管の器官培養法確立: 血管恒常性維持のメカニズムを探る
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12J03349
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
森田 知佳 北里大学, 獣医学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 血管 / 器官培養 / 平滑筋 |
Research Abstract |
血管の無血清培地での器官培養法は、薬物の長期作用を検討する上で有用な実験系である。しか急性摘出血管(Fresh)と比べると異なる性質を持つと考えられている。本研究ではFreshと比較して器官培養により誘導される機能変化のメカニズムを、①Mammalian mechanistic target of rapamycin (mTOR)と、②ユビキチンプロテアソーム系に着目し検討した。以下に本年度の研究成果の概要を示す。 ①非定型セリン/トレオニンプロテインキナーゼであるmTORは細胞の分化、細胞内Ca^<2+>動態を調節している。無血清器官培養により収縮張力が減弱するメカニズムを、mTORに着目し検討した。無血清培地での5日間の器官培養により摘出前腸間膜動脈平滑筋ではmTORタンパク質発現が増加し筋小胞体内Ca^<2+>が減少することによってKCIによる収縮張力が減弱する一方、mTOR阻害薬ラパマイシンはmTORタンパク質発現の増加を抑制し筋小胞体Ca^<2+>を保持させることによりKCIによる収縮張力を改善した(J. Vet. Med. Sci. 2014)。 ②ユビキチンプロテアソーム系はタンパク質分解、シグナル伝達を調節する。無血清器官培養によりKC1に対する収縮感受性が増強するメカニズムを、ユビキチンプロテアソーム系に着目し検討した。5日間の無血清器官培養血管(0%serum)においてはFreshと比較しKC1に対する収縮感受性が有意に増加した。ユビキチンプロテアソーム阻害薬MG132およびbortezomibは、0%senumの収縮感受性増加を有意に抑制した。 以上の結果は、無血清培地での器官培養により破たんする血管恒常性維持機構を明らかにした点、薬物を用いてこれらを是正した点で重要であり、生体内の機能を維持した血管の器官培養法確立へつながるための基礎的な知見を得たと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
9. 研究実績の概要で述べた研究成果はThe High Blood Pressure Research 2013 Scientific Sessionsで報告し、1本の論文(J. Vet. Med. Sci. 2014)にまとめることができた。現在はユビキチンプロテアソーム系を中心に研究をすすめ成果を論文にまとめていることから、おおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに無血清器官培養ウサギ前腸間膜動脈は急性摘出血管と比較しCa2+感受性増強することが報告されている。このことからユビキチンプロテアソーム系はCa^<2+>感受性を増強する可能性がある。したがって今後はCa^<2+>感受性増強メカニズムに注目し、ユビキチンプロテアソーム系がどのようにKC1に対する感受性を抑制するかを検討する。また現在まで行っている血管の器官培養法は摘出血管を無血清培地に静置する方法で行ってきた。しかし生体内の血管は実際には血流、血圧、拍動といったメカニカルストレスを受けている。今後は血管組織にメカニカルストレス ; 1. 流れ : 培養液還流による血管内皮へのずり応力負荷、2. 圧 : 血管壁における血圧の負荷、3. 周期的伸展刺激 : 心拍動による周期的収縮・弛緩の負荷、を行い器官培養を行う。長期におよぶメカニカルストレスが血管組織の機能及び構造にどのような影響を与えるかを、内皮および平滑筋の(脱)分化マーカー発現、収縮張力、組織形態、シグナルの詳細を検討することから明らかにする。
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Research Products
(4 results)