2012 Fiscal Year Annual Research Report
A・N・ホワイトヘッドにおける「出来事」研究:自然哲学とその展開
Project/Area Number |
12J03561
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
森 元斎 立命館大学, 衣笠総合研究機構, 特別研究員(PD)
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Keywords | A・N・ホワイトヘッド / 出来事 / 自然哲学 / 抱握 / 公害病 / 共生 / 具体性 / コミュニケーション |
Research Abstract |
本研究では、A・N・ホワイトヘッドの「出来事」概念を中心にその自然哲学の射程を明らかにすることを目的とし、そして哲学史上でのホワイトヘッド哲学の影響関係や、ホワイトヘッド哲学の応用可能性を探っている。具体的には、ホワイトヘッドの著作を丹念に精読した上で、出来事概念にとって極めて重要な「抱握(prehension)」を検討し、自然における出来事の動的な側面を明らかにした(Motonao Mori'On the Prehension-The birth of Prehension in Science and the Modern World' Process Thought)。またこうした観点から、私たちが生活する自然にいかに向き合うべきか、というより応用的かつ具体的な事例として、水俣病など公害病をとりあげた(森元斎「民衆科学詩一暗闇から毒を押し返す」『被曝社会年報』、「思考の行方一現実に根付くこと」『現代思想』、「具体性の詩と科学一路上の市民計測者」『現代思想』)。 これらの研究から、人間をモデルにしつつも、人間を特権化しない仕方での自然の有様が浮き彫りになった。ホワイトヘッドの自然哲学では、出来事が他の対象や出来事を抱握するという仕方で、出来事の主体性という、人間をモデルにしながらも非人間的な、つまり汎主体的な仕方で自然の営為を捉える事ができるとともに、人間と自然との共生やコミュニケーションのあり方としてホワイトヘッド哲学が有用であることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ホワイトヘッドの自然哲学の射程の広がりを検討する中で、ホワイトヘッド哲学そのものの理解はもちろんのこと、その展開についても、おおむね順調に進展して研究が進められていると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
ホワイトヘッドの自然哲学の研究は、さまざまな自然観の事例にかんして、応用可能な視座を提供していると思われる。今後も引き続き水俣の自然観にかんする研究を行い、より応用的かつ具体的な水準で研究を行っていきたいと考えている。 またホワイトヘッド哲学への同時代からの影響として、ラッセルやポアンカレといった数学や物理学からの影響を検討していきたい。なぜならば、こうした科学からの影響を基にして、ホワイトヘッドは後の形而上学や自然観について思索を展開させていったからである。哲学史的な水準での議論を今後もより深めていきたい。
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Research Products
(5 results)