2012 Fiscal Year Annual Research Report
有機合成化学的技法を用いたスピロ環を有する生物活性物質に関する研究
Project/Area Number |
12J03916
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
若森 晋之介 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 有機合成化学 / スピロアセタール / 立体制御 / 不斉合成 / ジテルペン / 短工程 / 炭素骨格 |
Research Abstract |
・スピロアセタールの新規立体制御法の発展とポリケチド天然物の合成研究 これまでの研究ではエンダース不斉アルキル化反応を用い,スピロ中心の立体化学を制御するスピロアセタールの新規構築法を開発した。一方,本研究では不斉アルドール反応を用いることで,立体選択的にアルキル鎖を導入するのみならず,生成する水酸基の立体化学も制御できると考えられる。これまで開発したスピロアセタールの構築法を発展させるべく,不斉アルドール反応を用いた立体制御法の確立に取り組んだ。 出発化合物である,SAMPヒドラゾンの不斉アルドール反応を行った。種々の検討の結果,不斉アルドール反応の制御が困難であり,アルドール付加体は得られなかった。現在は,これまでの構築法によって得られたモノアルキル化体に対し不斉アルドール反応を行い,アルドール付加体を得る検討を行っている。 ・ネッタイシマカに対する殺虫活性を有するリアノダン類の合成研究 リアノダノール及び14-O-メチルリアノダノールはコカノキの一種の熟果から単離された,リアノダンジテルペンであり,デング熱を媒介するネッタイシマカの幼生に対しては殺虫活性を示すことが明らかとなっている。リアノダンジテルペンは複雑な炭素骨格と多くの酸素官能基を有しており,その全合成は困難を極めており,炭素骨格の効率的な構築が不可欠である。そこでリアノダン骨格の高効率的構築法の開発に取り組んだ。 既知の化合物より3工程でカテコール誘導体へと導いたのち,プロパルギルアルコールとの逆電子要請型ディールス・アルダー反応を用いビシクロ[2-2-2]オクタンを得た。続いて,ルイス酸を用いた転位反応によりビシクロ[3.2.1]オクタンへと変換し,6員環フラグメントとの1,4-付加反応,1,2-付加反応により,メチル基を除くリアノダンジテルペンの全炭素骨格を有する鍵中間体の構築に成功した。現在は,リアノダノールの全合成に向け種々の検討を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一つ目のスピロアセタール構築法研究では,ポジティブな成果が得られていないものの,側鎖の立体化学と生じる水酸基を同時に制御するという挑戦的なテーマである。二つ目のリアノダノールの合成研究では,炭素骨格の効率的な構築を鍵とするリアノダンジテルペンの合成に取り組んでいる。リアノダノールは5員環と6員環が複雑に縮環した構造を有しており,そのため全合成が困難を極めていたが,短工程にて炭素骨格を構築する手法の開発に成功した。この成果は,リアノダンジテルペンの全合成にとって大きな一歩である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究実績の概要に記載した通り,今後も本研究課題を推進する。スピロアセタール構築法の研究では,不斉アルドール反応の最適化を行い,ポリケチド天然物の合成への応用を視野に入れた,水酸基を有するスピロアセタールの構築法を確立する。リアノダノールの合成研究では,構築した炭素骨格に酸素官能基を導入することでリアノダノールの全合成を目指す。
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