2012 Fiscal Year Annual Research Report
有限次元量子ランダムスピン系のくりこみ群による解析
Project/Area Number |
12J04024
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
宮崎 涼二 東京工業大学, 大学院・理工学研究科(理学系), 特別研究員(DC2)
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Keywords | 量子相転移・臨界現象 / スピングラス / 実空間くりこみ群 |
Research Abstract |
研究目的の通り、有限次元量子ランダムスピン系の相転移・臨界現象を研究した。当初の予定通り、今年度はまずランダムな1次元横磁場Ising模型を解析した。そして、相転移点と臨界指数νの正確な値を計算した。次にそこで用いた解析法の、実空間くりこみ群の方法を2次元系に適用できるように拡張した。ここで拡張された方法は、すでに確立している既存の結果を再現し、信頼性が高い。さらにこの方法は、これまであまり解析されていなかった反強磁性相互作用を含むランダムな横磁場Ising模型、いわゆる横磁場スピングラスに適用することができる。この場合の臨界現象には不明な点があり、特に無限ランダムネス固定点というものが存在するか否かという点について、意見が分かれていた。本研究ではその場合を解析し、無限ランダムネス固定点の存在を確認することに成功した。さらに横磁場スピングラスの絶対零度における相図を初めて描いた。3次元系についても解析を行い、2次元系と同様の結果を得た。 本研究では、これまで手がつけられず予想するだけに留まっていた領域に、堅実な解析に基づく一つの結果を与えた。そこで用いた方法は、他の研究者の方法の単なる応用ではなく、独自に開発した解析法である。その方法は汎用性が高く、それゆえこれまで困難であった領域を解析することが可能となった。本研究の内容を論文としてPhysical Review Eに発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた、ランダムな1次元横磁場Ising模型の解析、2次元系への拡張、および反強磁性相互作用を含むランダムな横磁場Ising模型の解析を行った。そして目標であった、2次元系の反強磁性相互作用を含むランダムな横磁場Ising模型の無限ランダムネス固定点の存在の確認を成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
ランダムなDyson模型を用いて、空間次元と臨界現象の性質の関係について調べる。さらに今年度、量子系ではなく、古典系の相転移についての興味深い性質を発見したので、それについても研究する。そして、その古典系での結果を当初の研究計画の量子系の問題に応用することで、計画以上の進展を目指す。
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Research Products
(6 results)