Research Abstract |
Stiefel多様体は佐々木-EinStein多様体の一つの重要な例である.例えば5次元のStiefel多様体はS^2×S^3と同一視され,この上には複数の異なる佐々木-Einstein構造が入ることが知られている.また,Stiefel多様体は向き付けられた2平面Grassmann多様体上の主S^1束であり,Grassmann多様体内のLagrange部分多様体とも深く関係している.例えば球面内の超曲面のガウス写像は,2平面Grassmann多様体内へのLagrangeはめ込みを与えるが,これはStiefel多様体へのLegendre埋め込みを与えているとも考えられる.このような背景をもとに,今年度は,標準的な佐々木-Einstein構造を持つStiefel多様体内のLegendre部分多様体に対し,その最も基本的で重要な外在的性質(極小性)を調べた.Stiefel多様体は自然に球面上の単位接束と同一視され,Legendre写像は超曲面の単位法束を与えていると思える.一方,Stiefel多様体上の標準的計量は,単位接束に標準的に導入される佐々木計量と呼ばれる計量のD-相似変形により得られるものと同じである.また,D-相似変形のもとで,Legendre部分多様体の極小性は保たれる.そこで,この観察をもとに,これを「佐々木計量を持つ単位接東内の単位法束の極小性」として見直し,一般的な議論を展開した.今年度の主な成果は次に挙げるものである.(1)佐々木計量を入れた接東内の法束に対する平均曲率形式を導出した.(2)実空間形の場合に,導出した平均曲率形式を用いて,法束の極小性が底空間の部分多様体がaustere性と同値であることを示した.(3)球面の単位接束にこの平均曲率形式を応用し,単位接束が極小になる新しい例を与えた.これは同時に,2平面Grassmann多様体への極小なガウス写像の新しい例を与えたことになる.(4)複素空間形の場合に,実空間形と同様の考察をした。この場合は,実空間形よりも複雑になり,法束の極小性に対する一般的な結論は得られていないが,複素部分多様体,全測地的部分多様体,一定の主曲率を持つaustere部分多様体が極小な法束を持つこと,austereであるが極小な法束を持たない例があることなどの,いくつかの部分的な結果を得た.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2平面Grasmann多様体へのガウス写像または,Stiefel多様体へのLegnendre写像を単位法束の極小性として見直すことは当初の計画の想定外のアイディアであったが,結果的に既存のいくつかの結果を含む形で,統一的な議論を展開できることが分かった.一方,当初の計画では,Stiefel多様体内の極小Legendre部分多様体のindexなどを調べる予定であったが,この計算においてはまだ結果を得ていない.しかし,後者の研究において,具体例を考察するにあたり必要と判断した対称空間論,超曲面論および表現論の諸分野の勉強を進めることができた.
|
Strategy for Future Research Activity |
引き続き,接東内の法束の極小性,または一般に外在的性質(例えはH-極小性)を調査する.既に発表した結果以外にも,いくつかの結果を得つつあるので,これを論文としてまとめる.一方,当初の計画通り,Stiefel多様体内の極小Legendre部分多様体の安定性に関する性質を調査する.具体的には,球面内の等径超曲面から得られるLegendre写像の無限小変形の空間を球関数論のテクニックを用いて調査する.この具体例の調査をもとに,より一般の極小 Legendre部分多様体の安定性に関する理解につなげる.
|