2012 Fiscal Year Annual Research Report
オランダにおける教育の自由と質保証に関する研究 -学校評価に着目して-
Project/Area Number |
12J04798
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
奥村 好美 京都大学, 教育学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | オランダ / 学校評価 / 教育の自由 |
Research Abstract |
本研究の目的は、オランダにおける学校評価の全体像を捉え、「教育の自由」と教育の質の保証との関係を明らかにし、日本において教育の質を守りながら地域や実情に応じた教育を実現するための示唆を得ることにある。そのために本年度は、(1)オランダの「教育の自由」のもとで独自の教育を行っているオルタナティブ・スクールをめぐる学校評価の研究、(2)国が質の保証のために行っている学校評価及び学力テストの現在の動向についての研究を行った。この2点については交付申請書に記載した計画通りであったが、加えて(3)日本における学校評価政策についての研究も進めることができた。 まず(1)の研究においては、オランダのオルタナティブ・スクールのうち現在最も学校数が多いダルトン・スクールに焦点をあてて研究を進めた。この研究によって、ダルトン・スクールに関していえば、2000年代のオランダでは「教育の自由」のもとでオルタナティブ・スクールの教育実践を認めながら、教育監査を通じた教育の質の保証を実現できているといえると考えられた。一方で、(2)の研究によって、2000年代後半以降、オランダでは学力テストによる学習達成度さえ標準を満たしていれば、学校が教育をより自由に決定できるという形で「教育の自由」を保障する方向へと政策が動いていることが明らかとなった。加えて、(3)の研究によって、日本の学校評価政策についての研究を進められたことで、(1)や(2)のようなオランダの研究を日本へ活かすための方途をわずかながら探ることができた。 これらの研究により、日本への示唆を得ることを念頭に置きながら、オランダの近年の動向をふまえて「教育の自由」と教育の質保証の関係の一端を明らかにすることができたといえる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、交付申請書に記載した計画では、(1)オランダの「教育の自由」のもとで独自の教育を行っているオルタナティブスクールをめぐる学校評価の研究、(2)国が質保証のために行っている学校評価及び学力テストの現在の動向についての研究を行うことを予定していた。実際には、これらに加えて(3)日本における学校評価政策についての研究も一部ながら進めることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
近年のオランダの学校評価制度は、テストの結果をより重視する方向へと展開している。こうした学校評価制度の展開に対して、オルタナティブ教育連盟が提言を示した報告書「全ての学校は1つ―初等教育における成果の評価へのオルタナティブ、現在の議論への貢献―」を出している。最も自由を享受してきたと考えられるオルタナティブ・スクールは、どのような学校評価制度を構想するのかを明らかにし、自由にもとづく多様性を認める学校評価制度の在り方を考察したい。その際、国レベルでの制度がもとづく学校評価の理論とオルタナティブ・スクール側が構想する学校評価の理論にも踏み込んで検討を行いたい。
|
Research Products
(4 results)