2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J04930
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
渋川 元樹 九州大学, マス・フォア・インダストリ研究所, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 多重ゼータ函数 / コーシー多項式 / マイクスナー・ポーラチック多項式 / 特殊函数 |
Research Abstract |
当該年度に実施した研究及びその成果は以下の通りである。 1.双ゼータ函数を用いて、様々な特殊函数の研究を行った。具体的には双ゼータ函数を用いて、変形多重三角函数を導入し、これを用いて従来の黒川信重、小山信也らによるヘルダー型の多重三角函数論を非常に見通し良く整理することができた。更にこの手法を推し進め、ヘルダー型の多重三角函数の楕円化(多重シグマ函数)の導入し、その基本的な諸性質を並行して解明することにも成功した。 2.1.の研究の過程で大きな問題となった、一般のフルヴィッツ型のゼータ函数(パラメータに関する)解析接続についての研究も併せて行った.これは複素数の複素数ベキの無限和というゼータ函数の定義によって生じる根源的な問題であり、この理論における大きな困難の一つでもある。報告者はこの困難を解決する為の「符合」を導入し、従来のゼータ函数に比べより(パラメータに関する)解析的性質が改良された「符号」付きのフルヴィッツ型のゼータ函数を定義して、その具体例をいくつか与えた。これにより従来のゼータ函数では得られなかったワイエルシュトラスの楕円函数の差分関係式をはじめ、そのhigher-depthに相当する(楕円)函数の差分関係式も得ることが出来た。 3.小松尚夫と共同でコーシー多項式の研究をする過程で、これを特殊値に持つゼータ函数の構成が問題となりこれを研究した。その結果として、自然数でパラメータ付けされたバーンズの多重ゼータ函数を、複素数で補間したゼータ函数を得ることができた。 4.リーマン・ゼータ函数をマイクスナー・ポーラチック多項式で展開するというクズネコフの公式の簡略化と実軸1/2以外の領域への拡張を行った。 5.ワイル代数上の対称和に関する作用素順序問題の拡張と証明の簡略化に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
多重ゼータ函数、特に双ゼータ函数、を用いることにより、既に知られている多重ガンマ函数や多重三角函数等の特殊函数の理論を見通し良く整理することは当初の計画通り成功した。この整理によってそれを更に一変数分拡張した「楕円化」を行うこともできた。またゼータ函数の「符合」の導入により、解析性の改良ができたことで特殊函数への応用範囲を広げることができたことは特に大きな成果である。更にこれらとは独立に、当初の計画では想定していなかったマイクスナー・ポーラチック多項式とゼータ函数の対応を明らかにできた。このように様々な特殊函数とゼータ函数との対応明らかにすることができたことから、「ゼータ函数論の構築」という当初の目的に適った成果を本年度達成することができたといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
1)ゼータ函数の「符合」の導入により、解析性の改良ができたことで特株函数への応用範囲を広けることに成功したが、肝心の「符合」の定義かかなり込み入っている。これをより簡明で扱いやすく改良を加えることが一つの大きな課題である。無論「符合」付き双ゼータ函数と特殊函数、特に何らかの対応があると思われるq-ゼータ函数、との対応の研究も引き続き行っていく。 2)当初の目標の一つであった、双ゼータ函数の複素積分表示の研究については収束性や解析性において本質的な困難が生じることが判明してきた。 これについても「符合」や何らかの変形を考察することで困難の打破を試みたい。 3)「ゼータ函数はマイクスナー・ポーラチック多項式の母函数である」という全く思いがけない発見についても、その一般化や応用などの研究を、主に調和解析の観点から推し進める。またマイクスナー・ポーラチック多項式以外にもゼータ函数に関連した母函数についての研究も併せて行う。
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Research Products
(4 results)