2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J05165
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
日高 建 九州大学, 数理学研究院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 場の量子論 / スペクトル散乱理論 / ネルソン模型 / 漸近完全性 |
Research Abstract |
当該年度は、場の量子論におけるスペクトル散乱理論を研究しました。散乱理論は、量子的な粒子同士が衝突し時刻をt→±∞としたときの粒子の振る舞い(漸近挙動)を調べる理論です。具体的な研究結果は、(ボソンに質量がある場合の)特異な摂動が加わったネルソン模型における漸近生成・消滅作用素をCookの手法を使うことにより構成し、任意の束縛状態は漸近消滅作用素によって消されることを示しました。ネルソン模型は量子的な粒子とスカラー量子場が線形に相互作用する系を記述する模型であり、全ハミルトニアンは非結合ハミルトニアンに相互作用を表す場の作用素φを加えたものです。特異な摂動が加わったネルソン模型は、通常のφをφの多項式で置き換えたものです。本年度の結果は、漸近完全性を示す途中の結果です。漸近完全性とは、漸近消滅作用素が消す状態全体の集合と束縛状態全体の集合が一致する、すなわち、漸近的な真空と全ハミルトニアンの固有値は同じということです。場の量子論において、漸近完全性を示すことは難しい問題であり散乱理論を数学的に構成をする際に重要です。通常のネルソン模型における漸近完全性は、DerezinskiやGerard等によって証明されています。特異な摂動が加わったネルソン模型では、相互作用を表す摂動項が自由場のハミルトニアンにたいして相対有界ではないので、通常の模型よりも扱いにくいです。従って、従来より一般的な方法を考えなければいけません。また、この模型で考えることによって証明のポイントが明らかとなり、他の模型の漸近完全性の証明にも応用できることが期待できます。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
先行研究であるDerezinskiとGerardの論文の証明をフォローするのに時間を要しているためです。また、特異な摂動が加わったネルソン模型の摂動項が、自由場のハミルトニアン等に関する相対有界であることを使えないことから生じる扱いにくさのためです。
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Strategy for Future Research Activity |
特異な摂動項を二次の多項式で考えてみるなど、より簡単な場合で結果を出していきます。また、特異なネルソン模型における紫外の除去など、別の問題も考えていきたいです。
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