2012 Fiscal Year Annual Research Report
腸管幹細胞維持におけるCDKインヒビターp57の役割の解明
Project/Area Number |
12J05266
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
沖田 康孝 九州大学, 生体防御医学研究所, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 腸管幹細胞 / G0期 / p57 / CDKインヒビター |
Research Abstract |
細胞増殖の適切な制御は生体の恒常性維持の基盤である。特に組織幹細胞では増殖サイクルからはずれた「GO期」に存在することが、幹細胞性を保つのに重要であると考えられている。しかし、組織幹細胞におけるGO期維持機構の分子実態は長い間不明であった。近年申請者のグループは、細胞周期制御因子であるCDKインヒビターp57が造血幹細胞及び神経幹細胞をGO期に維持し、その幹細胞性を保つことに必須であることを、遺伝学的に明らかにした。これがすべての組織幹細胞で適応できる一般的な通則であることを証明するために、腸管幹細胞におけるp57の重要性を明らかにすることを本研究の目的とする。本年度は以下の2点を検証した。 1)真の腸管幹細胞のマーカーにp57がなり得るか。 免疫染色法により、p57が幹細胞の位置に発現していることを確認した。p57陽性細胞の性質を明らかにするため、吸収上皮細胞、杯細胞、バネート細胞、内分泌細胞.タフト細胞、CBC細胞のマーカーと共染色を行ったところ、いずれもp57とは重ならなかった。Bmi1-GFPノックインマウスを使用して共染色を行ったところ、Bmi1陽性細胞の一部がp57を発現していることを明らかにした、 抗p57抗体の特異性の問題を否定するために、p57の下流にIRESを介して蛍光色素Venusを挿入したマウス(p57-IRES-Venusマウス)を作製したが、このマウスはp57ノックアウトとなり、トレーサーとして使用できないことが明らかになった、そこで、2aヘフチドを介して蛍光色素Venusを挿入したマウス(p57-2a-Venus)を作製したが、これも同様にp57ノックアウトとなり、トレーサーとして使用できないことがわかった。 p57陽性細胞が幹細胞であることを示すために、p57の下流にCreERT2を挿入したマウス(p57-CreERT2マウスとp57-2a-CreERT2マウス)を作製したが、どちらもp57ノックアウトとなって使用できないことが明らかとなった。 2)腸管幹細胞の維持にp57が必要か。 in vivo系として腸管特異的p57ノックアウトマウスを作成することに挑戦した。具体的には、Vnlin-CreERTマウス、 CAG-CreERT2マウス、Bmi1-CreERTマウスとp57 floxアレルマウスを交配して、p57が欠損できる条件を探した免疫染色にて、p57のシグナルが消えるかどうかを指標に、タモキシフェンの量や投与時期などを変えているが、現在までにうまくp57が欠損できるマウスの作成には至っていない
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
遺伝学的な検証は、幹細胞研究においてはっきりとした結論を得るうえで不可欠なものである。p57はその制御があまりよくわかっておらず、少しでもDNA配列を変化させるとかなり発現に変化があることが予想されていた。本年度遺伝子改変マウスを4ライン作成したが、いずれもp57ノックアウトマウスとなり機能しなかった。このため、p57陽性細胞の遺伝子発現ブロファイルなど、当初の計画した実験に取り組めていない。
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Strategy for Future Research Activity |
p57陽性細胞を可視化すること及びp57陽性細胞の細胞系譜追跡法は、この研究において必要不可欠な検証である。そのために、p57を含むBacterial artificial chromosomeを利用したトランスジェニックマウスを作成することにする。 p57が幹細胞維持に重要かを検証するためには、腸管特異的p57欠損マウスの作成が必要である。これを実現するため、Mx1-Creなどこれまで試していないCreマウスを試すことと、引き続きタモキシフェンの投与法について条件検討を続けていく。 その後、5FUやradiationによる腸管再生実験を行う。
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Research Products
(6 results)