2012 Fiscal Year Annual Research Report
Co2FeAl0.5Si0.5フルホイスラー合金から半導体への高効率スピン注入
Project/Area Number |
12J05553
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
齋藤 達哉 東北大学, 大学院・工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | スピン注入 / フルホイスラー合金 / 非局所測定 / 局所測定 / 半導体 |
Research Abstract |
本研究では,半導体への高効率スピン注入を室温で実現することを目的としており,本年度はスピン注入効率の増大を試みた.スピン注入効率はCo2FoAl0.5Si0.5(CFAS)の構造規則度だけでなくGaAsとの界面状態にも依存すると予想される.そこで,CFASの成膜温度によりそれらを変化させ,スピン注入シグナルの大きさを調査した.CFASの構造規則度は,CFAS成膜温度が上昇するに従って向上した.その一方,3端子Hanle測定で得られたスピン注入シグナルの大きさはCFAS成膜温度が低い試料ほど大きかった.しかし,この傾向はCFAS/GaAs界面に形成された局在準位中におけるスピン蓄積を検出したためにもたらされたことが示唆された.この結果は本質的ではないため,上記問題を取り除くため面内4端子非局所測定を用いて同様の調査を行った.その結果,3端子Hanleシグナルとは対照的にCFAS成膜温度が高い試料ほど大きなスピン注入シグナルが得られた. シグナルの大きさからスピン注入効率を算出した結果,10Kにおいて5%程度であった,これは一般的な強磁性金属を用いたときと同等,もしくはそれ以上の大きさである.また,このスピン注入シグナルを室温まで検出することに成功した,これはホイスラー合金を用いて初めての結果である. 最終的にデバイスへと応用する上で,面内2端子局所測定における磁気抵抗(MR)効果についても理解する必要があるが強磁性体/半導体界面抵抗の問題からその報告はほとんどない,一方,本研究で作製された試料は局所測定においても明瞭なMR効果を示した,そのバイアス電圧依存性は明らかとされていないため調査した結果,局所シグナルはバイアス電圧が大きくなるにしたがって増大した.これは,GaAs中におけるスピン緩和長とスピン検出効率がバイアス電圧によって増大したことに起因することを明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
高スピン注入源の探索に3端子Hanle測定が適していないこと,およびホイスラー合金をスピン注入源として用いる上で熱処理条件が極めて重要であることを示唆した.また,室温において初めてスピン注入シグナルを観測することに成功した.さらに,応用上重要となる特性についても調査を行い,その中で起こり得る現象を明らかにした.このように,本研究の目的である室温における高効率スピン注入実現への足掛かりとなる結果を得ただけでなく,今後スピン注入効率を向上させる研究を行う上での指針や応用へ向けた研究も行うなど,当初の目的以外の成果も得られており,計画以上に研究が進展していると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
現在の問題として,スピン注入効率が数%程度と低いことが挙げられる.CFAS/GaAs界面においてバンド構造が変化し,スピン分極率が減少してしまっていることが原因として考えられる,そこで,今後は当初の計画通り,CFAS/GaAs界面に絶縁障壁を挿入し,スピン注入効率増大を試みる.
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Research Products
(6 results)