2012 Fiscal Year Annual Research Report
二酸化炭素濃度2倍の水田における一酸化二窒素生成・消滅過程の同位体比を用いた解析
Project/Area Number |
12J05597
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
矢野 翠 東京工業大学, 大学院・総合理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | N_2O / 脱窒 / 分子内窒素同位体分布 / 土壌 |
Research Abstract |
水田土壌における一酸化二窒素(N_2O)放出に関わる微生物の代謝過程と、大気CO_2濃度の増加がそれらに及ぼす影響の解明を目的として、解放系大気CO_2増加施設を利用して、N_2O分子内窒素同位体分布による解析を行った。 落水後の8月下旬から冬期にかけての非耕作期間を対象として、高CO_2濃度区と対照区において大気へのN_2O放出量と深度10cmの土壌内ガス中のN_2O濃度、土壌中の無機態窒素濃度、溶存態窒素濃度、溶存有機態炭素濃度、土壌水分量等を週一回から月一回の頻度で測定した。その結果、1年目のモニタリングでは、高CO_2条件においても大気へのN_2O放出量は有意には変化しなかった。この原因として、落水後のイネの枯れ上がりや収穫が高CO_2条件下での蒸散量の低下による土壌水分量の上昇を弱めたことや、土壌中の無機態窒素濃度の処理区間の変化が不明瞭であったことなどが考えられた。今後、N_2O分子内窒素同位体分布とアンモニア・硝酸の窒素酸素同位体比を分析し微生物過程の解析を行う予定である。 また、春先の入水時の一時的なN_2O放出について、脱窒の寄与および土壌内ガス中のN_2Oの鉛直方向の輸送過程について解析を行った。対象期間は水田への給水開始から5-7日後とし、土壌水分条件の異なる複数の地点において同様のモニタリングを行った。その結果、耕盤上部への灌概水の蓄積に伴い、主に水面より上部の表層土壌において細菌の脱窒により生成されたN_2Oが地表から放出されると考えられた。また、地表面が水で覆われるとN_2Oが水に溶解して大気へ拡散しにくくなるために土壌内へ蓄積し、その後N_2への還元により消費されたと考えられた。この結果に関して、現在投稿論文を執筆中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
春先の水田入水時のN_2O放出に関わる微生物過程の解析が進んだことは、落水後から冬期の土壌における微生物過程を理解する上でも重要な進展であった。一方で、水田の非耕作期間を対象とした試料採取については、対象期間が長く、観測地点数も多いため、試料採取に多くの労力を費やし、分析および解析に遅れが生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は2年目の観測結果の解析を中心に、分子内同位体比による微生物過程の解析と、それらに影響を及ぼす要因の解明に重点をおく。また、細菌または糸状菌の生育を阻害する物質を用いた土壌培養実験を行い、糸状菌と細菌の脱窒活性への寄与率を比較し、観測結果との比較を試みる。
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Research Products
(1 results)