2012 Fiscal Year Annual Research Report
ミクロポーラスカーボンを原料としたカーボン固体酸の合成とその酸触媒活性
Project/Area Number |
12J06020
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
福原 紀一 東京工業大学, 大学院・総合理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | カーボン固体酸 / ミクロポーラスカーボン / 固体酸触媒 / ベックマン転移反応 / エステル交換反応 |
Research Abstract |
ゼオライトの鋳型合成で得られた高表面積カーボンに強酸性スルホ基を導入し,従来の低表面積型カーボン固体酸では対応できない疎水性基質の触媒反応への応用や,加水分解など親水性基質における触媒反応の活性向上を図った.得られたカーボン固体酸は,ファインケミカル,バルクケミカルのいずれにも応用できることが望ましいため,基本的な触媒作用を解明するためのテスト反応による活性評価の他に,工業的に有用な有機合成であるベックマン転移反応(ナイロンの原料の合成反応)や,糖類の加水分解反応(バイオマス利用の基礎的反応)に応用し,既存触媒との活性比較を行った.これらの反応にはカーボン固体酸の高い表面積とミクロ細孔構造が有利に働くと考えられ,得られた触媒は当グループで過去に報告されていた触媒を超える性能を示した. また,バイオマス変換を目的とし,合成した触媒をさらにエステル交換反応に用いたところ,こちらでも高い性能を示した.同反応は,植物の種子から得られる油脂をアルコールと反応させ,バイオディーゼルとして利用可能な物質(高級脂肪酸エステル)を生成する際の反応である.元来,均一系の塩基や酸触媒が用いられていた.しかし天然の植物から原料を得るということは決して純度の高い物質が得られるわけではなく,遊離の脂肪酸や水分といった不純物が塩基触媒に対する触媒毒として作用することで活性を低下させるという問題があった.もちろん硫酸も,均一系であるがために反応後の中和や分離操作でプロセスの高コスト化・高エネルギー化という問題を抱えていた.そこで本反応においても固体の酸触媒導入の重要性が非常に高く,今回の高表面積カーボン触媒を用いたものである. 既報の触媒と比べ本触媒は,このエステル交換反応に対する活性や繰り返し利用性が高く,効な触媒であることが分かったが,これは油脂を触媒内に吸着させることでその反応活性の効率を高めるという作用機序が働き,高い活性につながったものだということが判明した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画ではベックマン転位反など種々の有機合成反応において性能を試験する予定であった.合成した触媒を繰り返し用いたところ活性が低下してしまい,分析の結果細孔内に分子が詰まって性能を低下させてしまっていることが分かった.この欠点を逆手に取り,細孔に入りきらない大きさの分子を用いて反応を行ったところ,硫酸など既存の触媒と比べて活性が向上し,かつ繰り返しの利用にもほとんど性能を落とさずに耐えうることが分かった.
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Strategy for Future Research Activity |
現在,この触媒がバイオディーゼル合成のための油脂のエステル交換反応に有効に働く触媒であることを見出したところである.繰り返しの利用や不純物の存在下でも性能を発揮するこの触媒が反応を進行させるメカニズムを,反応速度論や分光学的アプローチから解明することが目標である.
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