2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J06029
|
Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
島田 佳憲 一橋大学, 大学院・商学研究科, 特別研究員(PD)
|
Keywords | IFRS / 国際財務報告基準 / 会計利益の質 / 財務報告 / 公正価値 / 原則主義 / 見積り・予測情報 / 利益調整 |
Research Abstract |
本研究の目的は,企業の会計利益の質を定量的に分析し,会計基準の変容が会計利益の質に及ぼす経済的影響を究明することを通じて,次世代における企業会計のあり方について提言することである。近年における財務報告は,IFRS(国際財務報告基準)に傾倒しがちである。IFRSの特徴として公正価値や予測見積りの拡充があげられ,これらは経営者が考える利益や将来業績をより適切に伝える可能性もあれば,逆に経営者の裁量が増すことで会計利益が歪曲化することもあり得る。それゆえ,会計利益の質に着目し,その経済的帰結を明らかにすることは,効率的な資源配分の促進等に貢献し,このような研究を実施することは極めて意義深い。 平成24年度においては,IFRS導入の経済的影響に関する諸外国の先行研究を広範囲にわたりレビューするとともに,同時に今後の実証的分析に利用するためのデータベースを構築した。そのうえで,裁量的会計発生高,利益平準化,価値関連性,保守性といった会計利益の質に関する尺度の定量化を行った。 また企業がどのようにIFRS導入が会計利益の質に影響を及ぼすと捉えるかを明らかにするために,質問票調査を実施する準備を行っている。本年度においては,IASBの委員や元委員といった専門家からヒアリングを行ったり,講演会に参加したりすることを通じてIFRSに関する問題点ならびに企業の実態に関する知見を深め,また先行研究のレビュー結果ならびに国内外の研究者との積極的交流・討議を通じて,質問票の書式を検討し,質問事項の確定を進めた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究において要となる各企業の会計利益の質の定量化を既に実施しているとともに,IFRSが会計利益に及ぼす影響を明らかにするための質問票の骨子がおおよそ完成されているため。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は,定量化を行った会計利益の質とIFRSの特徴の関連性を研究するうえ重要となる会計基準の個別項目に焦点をあてて検証仮説を設定するとともに,実証的分析を実施する。また,質問票を企業の担当部署に送付し,回答の集計ならびに定量的分析を行うことで,財務諸表作成者のIFRSに対する姿勢ならびに企業がIFRSの会計利益への影響をどのように捉えているかを明らかにすることを試みる。
|