2012 Fiscal Year Annual Research Report
微動に含まれる表面波の異方性解析による応力場と地質構造の関係性の解明
Project/Area Number |
12J06036
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
池田 達紀 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 異方性 / 表面波 |
Research Abstract |
本研究の目的は、微動に含まれる表面波の異方性解析から、日本の地下の応力状態を明らかにすることである。初年度は表面波の異方性解析に必要な異方性媒質を伝播する理論計算手法の開発をおよびHi-netで観測された地震波からの表面波の抽出を行った。 異方性媒質に対する高精度な表面波の理論計算手法は、観測された表面波を解釈する上で必要不可欠である。まず、横等方性と呼ばれる異方性に対して従来理論計算に利用されてきた手法を、より高精度なreduceddelta matrix法に拡張した。拡張した手法により、既存の手法では計算が困難であった高周波数領域まで、正確に理論計算を行うことができた。また、その計算速度に関しても、最大18%程度、従来の手法に対して高速な計算が可能になった。さらにより一般的な斜方晶系とよばれる異方性に対する、表面波の理論計算手法に関する研究も進めている。 また、Hi-netとよばれる地震観測網で取得された地震波記録から表面波の抽出を試みている。観測データに対し、周波数-波数法と呼ばれる手法を適用することで、表面波の伝播速度と到来方向の推定を行った。対象地域としては、既存の研究結果を参考に、2011東北地方太平洋沖地震により大きな異方性の変化があったとされる地域を選定している。その結果、Hi-netで観測された地震波データから周波数-波数法により表面波の伝播速度とその到来方向が推定できた。しかしながら、対象としている周波数帯に対し、安定して有意な表面波のシグナルを抽出することができていない。これは観測された地震波形のうち、表面波を十分抽出できていないことが原因であると考えられ、今後の課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
観測データからの表面波の抽出に関しては十分に安定した解析ができていないものの、表面波の異方性の理論計算に関しては、一般性の高い斜方晶系とよばれる異方性に対し、高精度な計算手法を拡張することができた。この手法開発は、今後観測された表面波の異方性を解釈していく上で有効であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はより安定したシグナルを得るために、適切なバンドパスフィルタの適用や時間ウィンドウを検討する。また、異なる表面波の推定手法として空間自己相関法を適用することで、表面波の推定精度を検討する。さまざまな方向から到来する表面波の伝播速度の方位依存性から、開発した理論計算手法を用いた解釈により、その異方性を推定し、地震による異方性の変化と地下の応力状態を結び付けた議論をする予定である。
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Research Products
(1 results)