2012 Fiscal Year Annual Research Report
感情状態と注意の相互影響過程に関する心理生理学研究
Project/Area Number |
12J06496
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
守谷 大樹 広島大学, 大学院・総合科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 注意 / 感情状態 |
Research Abstract |
感情状態はヒトの注意に影響することで,行動や思考を変化させる。これまで,快な気分が注意の範囲を拡大させる(一度に処理できる情報を増やす)ことが示されている。一方で,感情状態は,注意を向ける対象の選択にも影響する可能性がある。たとえば,快感情状態は,新奇な刺激に対する注意を増大させることで,新しい環境に対して積極的に働きかける行動を促進すると考えられている。新奇な刺激とは,まれに出現する未知の情報で,実行中の課題と関係なく出現しても注意を引くことが知られている。本研究では,幸福感情状態が新奇刺激に向けられる注意に及ぼす効果について検討した。行動的側面と情報処理の側面を評価するため,刺激を注視した時間と,刺激に惹起される脳波の一種である事象関連電位を注意の指標とした。 快感情状態と中性感情状態の下で,頻繁に出現する正立の三角形と,稀に出現する倒立の三角形,稀に出現する意味を持たない新奇刺激を呈示した。その結果,新奇な刺激を注視する時間は,新奇な刺激において高頻度な三角形よりも延長した。注視時間は感情状態によって変化しなかった。事象関連電位のP300成分は,新奇な刺激に対してその他の刺激に対するよりも大きくなった。この効果は幸福感情条件で中性感情条件よりも大きい傾向があった。P300の振幅は,新奇な刺激に向けられた注意の量を反映していると考えられている。このことは,快感情状態は新奇な刺激に対する注意を増大させ,処理を促進させることを示す。本研究から,快感情状態は新奇な環境における情報の処理を促進させ,適応を促進させる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた感情状態が新奇刺激の処理に及ぼす効果のうち,快感情については検討した。現在は不快感情の影響を検討中であり,おおむね順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後,現在得られている知見を堅固なものとするために,不快感情が新奇な刺激の処理に及ぼす効果についても引き続き検討する。得られた結果は国内外の学会で発表し,国際誌に投稿する。それと並行して,次の課題である注意が感情状態に及ぼす効果について検討を開始する。この研究では,注意の範囲や注意を向ける対象を操作し,その後の感情状態がどのように変化するかを検討する。
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Research Products
(2 results)