2013 Fiscal Year Annual Research Report
東アジアにおける黒色炭素粒子の降水による除去過程の解明
Project/Area Number |
12J06736
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大畑 祥 東京大学, 大学院理学系研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | エアロゾル / ブラックカーボン |
Research Abstract |
雨水や雪に含まれる黒色炭素粒子(BC)の質量濃度・粒径分布の測定は、BCの降水による除去過程の理解や、雪氷面に沈着したBCによる雪アルベド低下の効果を推定する上で重要である。私は前年度から今年度にかけ、ネブライザーとBC測定装置(Single Particle Soot Photometer : SP2)を用いて水サンプル中のBCを測定する新手法の詳細な評価を行った。本測定法の測定誤差や再現性についてまとめ、査読付き国際誌に投稿・出版した。また、雪サンプルによっては、粒径が1ミクロンを超える巨大なBC粒子の存在量が無視できないことが近年指摘されていることを踏まえ、SP2のBC測定粒径範囲を拡張する改造を行った。SP2は、レーザー中に導入された個々の粒子の発する白熱光と散乱光を検出することにより、個々のBCの質量を測定する測定器である。標準のSP2は白熱光を2つの検出器で検出し、BC測定粒径範囲は70-850nm程度であるが、私は標準のSP2に感度を調節した白熱光検出器をさらに1つ追加し、測定粒径範囲を70-4000nm程度まで拡張した。これらの研究により、水サンプル中のBCのより正確な測定が可能になった。 加えて、大気中のBC含有粒子の吸湿性をオンラインで測定する新しい測定システムの開発を行った。化石燃料やバイオマスの燃焼により放出されたBCは、大気中を輸送される過程で、ガス成分の凝縮や他のエアロゾルとの凝集により被覆を持つようになる。BCは元来疎水性であるため、BC含有粒子の吸湿性は被覆成分の組成と被覆量により強く支配される。実大気におけるBC含有粒子の吸湿性の測定は、BC含有粒子の雲凝結核特性や光学特性を知る上で重要であるが、先行研究が極めて限られている。そこで私は、標準のSP2に相対湿度制御機能を追加したhumidified-SP2 (hSP2)の開発を行った。実験室での試験により、新たに開発したhSP2がBC含有粒子の吸湿成長率(乾燥粒径に対する吸湿後の粒径の比)や吸湿パラメータκをBC含有量の関数として高時間分解能で測定可能であることを確認した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
水サンプル中のBCの測定法の詳細な評価に加え、測定可能粒径範囲を拡張したBC測定装置を開発したことより、雨・雪サンプル中のBCのより正確な測定を可能になった。また、大気中のBCの濃度・粒径分布・被覆量・吸湿性を同時に測定する新しい測定法を確立した。これらは、BCの降水除去過程を観測的に明らかにする上で基盤と成る重要な成果である。以上の点を考慮し、本研究はおおむね順調に進展していると考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
新たに開発した大気中のBCの吸湿性を測定する測定システムと、雨・雪サンプル中の幅広い粒径範囲のBCを測定する新手法を用い、東京で集中観測を行う。降水イベント時の大気中のBCの微物理量(濃度、粒径分布・被覆の厚み、吸湿性)の時間変化を高時間分解能で測定することにより、BCの降水除去効率の各微物理量への依存性を明らかにする。また、同時に雨水中のBCの濃度・粒径分布を測定することにより、実際に雲凝結核として作用したBCの特性を明らかにする。さらに、エアロゾル質量分析計を用いた大気中の各種イオン濃度の測定も同時に行い、BCの湿性除去に関する測定データの解釈に利用する。得られた結果を学会で発表し、論文にまとめる。
|