2012 Fiscal Year Annual Research Report
プロバイオティクスの抗炎症作用を評価する刷新的手法の確立と発酵食品開発への応用
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12J06899
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
荻田 佑 広島大学, 生物圏科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 低酸素環境 / アドレナリン / プロバイオティクス |
Research Abstract |
今年度は、炎症性腸疾患の発症および症状増悪に寄与する2つの生体環境変化(低酸素環境およびストレス誘導神経伝達物質による炎症反応の惹起)に着目し、プロバイオティクスの抗炎症効果を評価するためのin vitroおよびin vivo評価系の構築を目的に研究を行った。 最初に、生体における炎症組織局所の不安定な酸素供給を考慮し、腸管免疫細胞を用いて、低酸素環境を組み込んだin vitro評価系の構築を行った。その結果、in vitroの低酸素環境下において、炎症性免疫細胞(Th17)が優勢となるとともに低酸素下からの酸素の再曝露により、炎症性サイトカイン(IL-17)の産生が惹起されることを確認した。この結果は炎症性腸疾患モデルマウスの腸管炎症組織の免役細胞の挙動と類似しており、本研究で構築した評価系は生体条件を摸擬した有効な抗炎症評価系となり得ることから、大変意義がある。そこで現在、低酸素環境を組み込んだ抗炎症効果評価系を用いて、嫌気環境を好むビフィズス菌を中心にプロバイオティクスの抗炎症効果性を評価するとともに、in vivoでのプロバイオティクスの抗炎症性を評価するため、炎症性腸疾患モデルマウスであるDSS誘導腸炎マウスの腸管関連リンパ組織における低酸素関連因子の発現および炎症性免疫細胞の挙動を解析している。 続いて、ストレス下で誘導される神経伝達物質(アドレナリン)による炎症反応の惹起に対するプロバイオティクスの抗炎症効果評価系の構築を行った。その結果、in vitroにおいて、アドレナリンの作用により炎症性免疫細胞(炎症性樹状細胞)が活性化されるとともに、アドレナリンを皮下接種したマウスの腸管組織においても炎症性免疫細胞応答の惹起が確認された。本研究でストレスによる腸管の炎症状態を再現することができたことは生体において抗炎症効果を発揮する可能性が高いプロバイオティクスを選抜するにあたり大変意義がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度計画していたin vitroにおける、生体炎症局所環境を摸擬するための腸管免疫細胞を用いた低酸素培養系および神経伝達物質(アドレナリン)による炎症応答惹起の系を構築し、プロバイオティクスの抗炎症性を評価することができた。さらに、通常酸素下と低酸素環境下でのプロバイオティクスの免役細胞に対する応答性が異なることを明らかとし、新たな抗炎症メカニズムの解明が進むことが期待されるとともに、より抗炎症効果の高いプロバイオティクスを選抜できることは、炎症性腸疾患の予防と症状軽減を目的とした機能性食品の開発に大きく寄与できると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は今年度、構築した生体炎症組織局所を模した抗炎症性評価系を用いて、抗炎症効果の高いプロバイオティクスを選抜するとともに、炎症性腸疾患モデルマウスに対するプロバイオティクスの抗炎症性を免疫組織学的に評価する。また、生体炎症局所におけるプロバイオティクスの抗炎症性メカニズムを明らかとする。
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