2012 Fiscal Year Annual Research Report
肺腫瘍における微小環境:腫瘍間質相互作用による増殖シグナルおよび薬剤耐性への影響
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12J07263
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
飯田 慎也 東北大学, 大学院・医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 非小細胞肺癌 / 癌間質相互作用 / Ax1 / EGFR |
Research Abstract |
非小細胞肺癌(NSCLC)細胞と間質細胞との解析から見出されたチロシンキナーゼ受容体AxlおよびそのリガンドGas6の役割について,解析を進めている.NSCLC症例において,活性型Axlの発現を解析し,細胞増殖および予後不良と相関関係が認められた.今回,同じ症例を用いて不活型Axlの発現を同様に解析した.その結果,不活型Axlは癌細胞の細胞膜および血管内皮細胞に発現していることが判明した.また,活性型Axlが発現しているにも関わらず,不活型Axlが発現していない症例が認められた.続いて,Axlの活性化による影響を,NSCLC培養細胞を用いて解析した.今回の実験に用いた培養細胞は,Gas6の発現が高いPC9と,Gas6添加により顕著なAxl活性化を示したNCI-H23を選択した,PC9に対し,Axl阻害抗体(中外製薬より供与)を添加した結果,細胞増殖を有意に抑制し,同時にAxlの活性化および細胞内増殖シグナル経路における因子の一つERKの活性化を抑制した.これに対し,NCI-H23にGas6を添加した結果,増殖は誘導されたが,Axl阻害抗体によるその抑制は認められなかった.同様に,蛋白質レベルにおいて,Gas6によるAxlの活性化が認められたが,Axl阻害抗体によるAxlおよびERKの活性化抑制は認められなかった.また,NSCLC細胞と間質細胞との解析から,Axlと共にチロシンキナーゼ受容体EGFRが検出されたことから,EGFR阻害剤に対する耐性獲得のメカニズムとして,Axlが関与している可能性が示唆された,このことから,EGFR阻害剤耐性獲得細胞の確立を計画した.NSCLC培養細胞A549およびPC9,EGFR阻害剤gefitinibおよびerlotinibを用いて,過去の文献と同程度の耐性を獲得した細胞を確立した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
EGFR阻害剤耐性細胞の確立に関して,申請書の研究計画では,EGFR阻害剤耐性細胞を確立するために,A549およびLK87を用いることを計画していた.しかし,どちらも同様の性質(野生型EGFR)を有していたことから,性質の異なる細胞株として,LK87の代わりにPC9(変異型EGFR)に変更することとした,計画変更に伴い,耐性細胞の確立が遅れることが危惧されたが,計画以上に早く耐性細胞を確立させることができた.
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Strategy for Future Research Activity |
NSCLC症例を用いた検討から,Axlを発現していないにも関わらず,活性型Axlが発現している症例が認められた,今回用いたAxl抗体は,Axlの細胞外ドメインを認識する抗体であることから,何らかの原因により細胞外ドメインが切断された可能性が示唆されたため,今後検討を進める。また,培養細胞を用いた実験において,Axl阻害抗体による効果の違いが認められたが,今後Gas6の供給源や,上記のAxl細胞外ドメイン切断の関与等,解析を進める予定である.更に,耐性獲得におけるAxlの関与について解析する予定である.
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Research Products
(1 results)