2012 Fiscal Year Annual Research Report
統語‐意味インターフェイスから見た省略と文断片の研究
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12J07273
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
永次 健人 九州大学, 大学院・人文科学研究院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 統語論 / 意味-統語インターフェイス / 三部門並列モデル / 省略 / 文断片 / 格現象 / 補文選択 / 再帰形 |
Research Abstract |
本研究は、生成文法における最重要課題である自然言語の普遍的特性とその変異可能性の解明のため、形式と解釈のずれが生じる省略現象の分析を通して、統語-意味インターフェイスの特性を明らかにすることを目標とする.特に、省略現象の中でも、解明されていない部分が多い「文断片」の文法的特性を、英語を中心とした通言語的調査から研究し、現行のモデルを検証する試金石とする。具体的には、通言語的な事実の検討を通して、従来の分析である削除分析の問題点を明らかにするとともに、R.Jackendoffのインターフェイスの理論に基づく「直接生成分析」の立場から分析を行う。これにより、文とは異なる文断片の特性を明らかにし、文と文断片の文法現象を統一的に説明する文法理論の構築を目指す。 本年度の研究概要としては、以下の通りである。 (1)英語学・言語学の文献、特に、省略現象、および、言語インターフェイスに関するものを購入し、従来の研究の成果を確認し、その問題点を検討した。 (2)英語、朝鮮語、イタリア語、トルコ語のインフォーマントへの調査を実施、各言語における文断片の文法特 性、特に格現象に関するデータを採集した。 (3)(1)の成果として、削除分析の経験的問題について、『九州大学英文学55号』に"Fragments within Islands"を掲載した。 (4)(1)、(2)に基づいた成果を25年7月に韓国で行われる"ELSOK 2013"で発表する。また、25年6月に茨城県水戸市の茨城大学で行われる「日本言語学会第146回大会」にて、トルコ語の文断片に関する研究成果を発表する。 (5)日本語の文断片についても、調査・分析を進め、福岡言語学会2012年度第3回例会で「日本語文断片に関する考察-削除分析の批判的検証-」というタイトルで発表した。 (6)日本英語学会等の国内の英語学・言語学の学会、または、ワークショップに参加し、最新の研究動向を確認した。 (7)関連する研究を行っている他研究機関の研究者と研究打ち合わせを行い、情報交換をするとともに、今後の研究方針について、意見交換をした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の進展に必要不可欠な先行研究の整理と言語データの採取を計画通りに終えることができた。具体的には、朝鮮語・トルコ語・イタリア語について、新たに調査し、通言語的分析を更に進展させることができた。研究成果は、「福岡言語学会例会」で発表した他、査読付き論文の掲載が一本と、全国学会・国際学会での口頭発表が、それぞれ一つずつ、決定している。
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Strategy for Future Research Activity |
23年度の成果の発表を進めると共に、24年度の研究を、計画通りに実施する。具体的には、文断片における補文選択現象と再帰形の振る舞いについて、通言語的に調査・分析を行う。また、文断片と他の削除現象と対照研究を目的としたワークショップを実施する。
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