2012 Fiscal Year Annual Research Report
磁性体/半導体ヘテロ構造におけるスピン伝導機構の解明と新原理スピン検出技術の創出
Project/Area Number |
12J07390
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
白幡 泰浩 東京工業大学, 大学院・総合理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | スピン依存電子伝導 / スピンフィルター効果 / Oblique Hanle効果 / 垂直磁気異方性 / 電気的スピン注入 / 円偏光発光解析 |
Research Abstract |
強磁性薄膜/半導体接合界面における電子スピン伝導プロセスを解明することを目的として、特に平成24年度は円偏光スピン励起法によるスピンフィルター効果についての調査を行った。平成24年度前半は、二元系強磁性合金FeGa薄膜とAlGaAs/GaAs量子井戸(QW)ヘテロ構造に対して、GaAsに円偏光を照射することで励起されるスピン偏極電子の接合界面におけるスピン依存光電流についてOblique Hanle効果の原理を用いて調査した。その結果、GaAsのバンドギャップに近いエネルギーを持つ円偏光をFeGa/AlGaAs/GaAsQW試料に照射したときのスピン依存光電流の符号が磁場の印加方向に依存して明瞭に変化することが明らかとなり、FeGa/AlGaAs接合界面においてスピンフィルター効果が発現していることが示された。さらに、このスピンフィルター効果の起源に関連して、照射光の円偏光度とスピン依存光電流の間の位相差に磁場依存性が存在し、この位相差がFeGa薄膜の磁化過程を反映したヒステリシス挙動を示すことを明らかにした。以上により、Oblique Hanle効果を利用することで低磁場において強磁性体/半導体量子井戸構造界面でスピンフィルター効果を検出することに成功した。また、Oblique Hanle効果を利用したスピン検出手法が有効であることが実証された。 一方、平成24年度後半は、低磁場においてスピン注入を実現するために、残留磁化状態において垂直磁化を示す強磁性薄膜の成長条件の探索と評価、さらには電気的スピン注入とそれに伴う円偏光発光解析についての研究を行った。その結果、CuとNiから構成される多層膜において垂直磁気異方性が発現するNiおよびCuの膜厚、積層周期の最適条件が見出された。また、電気的スピン注入と円偏光発光解析の研究では、測定温度10K,印加磁場0.2Tにおいて、最大8%の注入電子のスピン偏極率を得ることに成功した。以上の結果より、垂直磁気異方性を有するCu/Ni多層膜はスピン注入源として有用であることを実証された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画当初に基づいて、多元系強磁性薄膜電極とAIGaAs/GaAs量子井戸構造との接合界面でのスピン伝導に関しての知見が得られ、おおむね順調に進展していると自己評価する。一方、垂直磁気異方性を有する磁性多層膜の作製条件の探索に時間を要したことと日本国内における液体ヘリウムの供給不足が影響して、スピン伝導のメカニズムの詳細についての調査が積み残された。
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Strategy for Future Research Activity |
上記で記した垂直磁気異方性を有する磁性多層膜とAIGaAs1GaAs量子井戸構造とのヘテロ構造化界面におけるスピンの伝導特性について詳細に評価することが重要である。そのため、積み残し課題について研究を最優先して進める。一方、次年度に予定している研究については、予定を若干前倒しして進めており、磁気特性評価における測定制度の向上と評価手法の改良を行うことで、計画通り進める予定である。
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