2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J07495
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
力石 真 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 交通計画 / 不確実性 / 交通行動 / 移動権 / 環境教育 / 交通事故 / 倫理的規範 |
Research Abstract |
(1)交通行動の不確実性に関する基礎研究 交通計画に内在する不確実性の中でも、交通行動の理解や交通需要予測が不完全であることに伴い生じる不確実性に着目し、既往の研究および今後の研究の方向性を整理した。その結果、不確実性の存在を許容しない従来型の計画立案プロセスは、需要予測は外れてはいけないという世論を形成し、需要予測に過度の期待を抱かせる可能性が高いこと、またこれらの問題に対処するには、不確実性は不可避であることを前提とした計画立案プロセスを採用することが望ましいことなどを指摘した。 (2)計画目標に係る不確実性に関する基礎研究 (1)で行った研究の上位問題として計画目標の設定に係る不確実性に関する基礎研究を行った。具体的には、計画目標の設定においては、計画者や市民の倫理的な判断が重要な役割を果たすことを念頭に、(A)モビリティと交通事故に関する倫理的対立に関する基礎研究、(B)交通分野及び他分野の環境教育政策の関連性に関する基礎研究を実施した。(A)については、交通事故リスクと移動権に関する倫理的規範の歴史的推移についてそれぞれレビューを行い、交通権との倫理的対立を抑える交通事故リスクの実践的な計測方法について検討した。(B)については、交通分野における環境教育政策が個人の学習の内面化を促し、態度や個人規範といった心理的側面に変化をもたらす場合、他の行動側面においても行動変容が生じ得ることを指摘し、心理学や教育学における既往研究を下敷きに環境学習の内面化及び波及効果の発生可能性を整理し、モビリティ・マネジメントが電力消費行動、及び、東日本大震災による節電行動に及ぼす影響に関する実証分析を行った。 以上の分析より、不確実性を正面から取り扱う場合、計画理念や他分野との関連性は経時的に変化し得ることを前提に計画プロセスを議論することが肝要と考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究は順調に進んでいる.ただし,計画段階の想定以上に,倫理的規範の経時的な変化や他分野の計画との関連性が,交通計画の不確実性と深くかかわっていることが判明したため,研究の対象範囲を広げて分析を進めている.そのため,当初予定していた研究の一部が完了していないが,全体としては本研究課題の狙いに適した研究フレームに改善されたと考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き交通計画に係る倫理的規範の経時的変化に関する研究,交通計画の他分野との関係性に示唆を与える研究を継続するともに,これまで行ってきたレビューなどから抽出された仮説を検証するために各種データを活用した実証分析を積極的に行い,不確実性下における実践的な交通計画手法の検討を進めていく予定である.
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