2012 Fiscal Year Annual Research Report
固体表面-量子ドット系におけるホットキャリア輸送過程に関する理論的研究
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12J07666
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
河合 宏樹 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 第一原理計算 / 非平衡グリーン関数法 / 多体摂動理論 / 電子-格子相互作用 |
Research Abstract |
平成24年度においては、固体表面-量子ドット系に着手するための準備段階として異なる3つの研究テーマに取り組んだ。本課題の最終目標は、固体表面吸着系におけるキャリア輸送過程を、異なる対象に用いられてきた手法の複合によってアプローチすることが可能か検証することにあると判断したため、初年度はそれぞれの理論手法への理解、及び基礎的なセンスを深めることを狙いとした。 第一のテーマとして、固体表面-量子ドット系の電子注入過程の計算に用いる予定である、非平衡グリーン関数法(NEGF)を用いて、Ag電極ナノギャップに捕捉されたC_<60>の電気伝導度に関する研究を行った。C_<60>の吸着構造によって電気伝導度が特徴的に変化することを発見し、それがフェルミレベル近傍で電極と強くカップリングするC_<60>の分子軌道の対称性に起因していることを明らかにした。その中で、研究実施計画の通り、プログラム "TranSIESTA"への電子-格子相互作用計算の実装も行った。第二のテーマとして、半導体及び絶縁体の電子状態を高精度で求めるため必要となる、多体摂動理論(MBPT)の手法を用いて、水分解型光触媒として知られているGaNとZnOの固溶体の電子状態及び光学応答に関して研究を行った。様々な固溶体の構造モデルをMBPTによって計算し、その可視光応答性を説明する結晶中の局所構造について論じた。第三のテーマとして、量子ドット中の励起電子の緩和を調べる際に適用可能と考えられる、MBPTに基づいた電子-格子相互作用の計算手法を用いて、窒化ガリウムGaNにおける吸収スペクトルの温度依存性について研究を行った。本手法は、本テーマは、イタリアのDr.Andrea Mariniの研究グループとの共同研究である。計算の結果、実験で観測されている吸収スペクトルの温度依存性を説明することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
量子ドット系に着手するにあたり必要な計算手法について学ぶと同時に、Agナノギャッブ-C_<60>系、GaN-ZnO固溶体、GaNという3つの異なる対象のそれぞれについても、理論の立場から実験結果に説明を与えるような有意義な結果を得ることができたため、当初の想定を超える結果が得られたと評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度においては、まず上記した3つの研究テーマについて論文として纏めることを目標とする。その後、これまで個別に取り扱ってきたNEGF、MBPT、及び電子-格子相互作用の計算の複合について検討を始め、固体表面-量子ドット系への適用を試みる予定である。
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Research Products
(4 results)