2012 Fiscal Year Annual Research Report
マルテンサイト変態の低温異常の解明と超弾性合金の低温応用
Project/Area Number |
12J07777
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
新津 甲大 東北大学, 大学院・工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 形状記憶合金 / 極低温 / ストレイングラス / ニチノール / 超弾性 / カイネティックアレスト / メタ磁性 |
Research Abstract |
マルテンサイト変態に関連する低温異常現象の中で最も大きなインパクトを有するストレイン・グラス(SG)現象の起源の解明と普遍的な現象としてのコンセンサスを確立するため、SG現象が起こる合金ri-51.8Ni(at.%)を用い、低温域におけるマルテンサイト変態挙動とその温度依存性について調査した。その結果、SG状態においても超弾性が発現すること、また正・逆変態の誘起応力ヒステリシスがSG状態において異常に大きくなることを突き止めた。さらにこの応力ヒステリシスの異常な増加傾向を利用することで、一定応力下の加熱過程において、平衡論的にはありえないはずの、母相からマルテンサイト相への変態が可能であることを確認した。これと同様の変態挙動は、NiCoMnInメタ磁性形状記憶合金の一定磁場印加状態での加熱過程においても起こる(カイネティック・アレスト現象)ことが知られており、母相-マルテンサイト相界面の動力学に関する低温での異常な挙動が、外場の種類に寄らず普遍的に起こり得る現象であることを突き止めた。応力ヒステリシスの異常な増加傾向については、転位の引き摺りに関して現象論的解析を行った先行研究を転用する形で、その温度依存性が非熱活性化の成分と熱活性化の成分の和で表すことができることを明らかにした。この知見は、熱弾性型の形状記憶合金が、熱活性化および比熱活性化の成分どちらが支配的であるかによってカテゴライズできることを示唆しており、学術的に非常に意義が大きいばかりでなく、これら成分に関する情報を系統的に把握することで、形状記憶合金の低温応用にふさわしい合金系を効率よく見出す、もしくは推測することができるものと期待される。 また室温で良好な超弾性特性、組織制御性を有するCuAIMn基形状記憶合金を用いた調査では、4.2Kにおいても良好な超弾性特性が得られることを確認し、極低温での応用可能性を見出すことに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Ti-Ni合金、高加工性Cu-Al-Mn合金を対象に、磁気特性等の基本変態特性の評価および機械特性の評価を行った。Ni基メタ磁性合金も評価段階にある。TEM観察による組織評価はまだ行っていないが、機械特性の評価から低温異常に関する知見を予想以上に得ることができ、今後さらなる進展が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
同様の調査を他の合金系にも拡張して行い、低温異常現象の普遍的・系統的理解につなげる。当初の予定通り、TEM観察により組織学的評価を行うことで、ストレイングラス状態における界面の動的観察や内部組織の温度変化について調査する。新たに明らかになった応力ヒステリシスの低温異常の起源を調べるため、すでに調査したNi-Ti合金の熱処理を変えたものを用いて、異常現象と熱処理(空孔濃度)の関係について調査する。
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Research Products
(7 results)