2012 Fiscal Year Annual Research Report
分子動力学計算を用いて解明するF1-ATPase回転のしくみ
Project/Area Number |
12J07915
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
伊藤 祐子 横浜市立大学, 生命医科学研究科, 特別研究員PD
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Keywords | F1-ATPase / 分子動力学計算 / シミュレーション / 分子モーター / 自由エネルギー計算 |
Research Abstract |
特別研究員としての研究課題は、F_1-ATPase分子モーターの回転作用機構を明らかにすることである。採用一年目は、まず、F_1-ATPaseのαβサブユニット2量体のATP加水分解後の構造変化を自由エネルギー計算を用いて明らかにしようと試みた。 ATP加水分解後のβサブユニットはClosed構造から(βDp)Half-Closed構造(βHc)になることが一分子実験により分かっている。また、このATP加水分解後の構造変化の過程では、ヌクレオチドの状態も議論の対象になっている。磁気ピンセットを用いた別の一分子実験からは、ATPが加水分解した後、その生成物であるリン酸は直ちに抜けずにATP反応部位に留まっている可能性が高いことが示されている。しかし、リン酸がATP反応部位に残ることでどれくらい安定なのかという定量性や、なぜ留まる必要があるのかという理由は分かっていない。したがって、このATP加水分解後の構造変化について、リン酸がATP反応部位に残っているパターン(ADP+Pi)とそうでないパターン(ADPだけ)の2つの状態で、アンサンブルサンプリング法を用いたシミュレーションを行い、自由エネルギー地形を得ることにした。 実際に計算を開始してみると、自由エネルギー地形の収束が予想以上に遅く、結果的に膨大な計算量が必要であった(総計算時間5μs)。最終的には、それらの妥当な自由エネルギー地形を得ることができ、リン酸が活性部位に留まる場合、どれくらいClosedからHalf-Closedの構造変化に有利であるかを定量的に示すことができている。今後、原子レベルで解析を行い、この構造変化の詳しいメカニズムや、多くのATPaseが普遍的にもつ2次構造がATP加水分解後の構造変化に果たす役割を明らかにする予定である。またここで得られる2量体構造変化のメカニズムは、現在計算中のF_1-ATPase全体の構造変化にも重要な示唆を与えることができると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度には、αβ複合体の構造変化に関わる自由エネルギー計算を実施した。予想以上に収束に時間がかかってしまったため、計算量は膨大になったが、有意義な結果を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
1年目に得られたαβサブユニット2量体の計算データを解析し、論文にまとめることと、同時並行してF_1-ATPase全体の計算を遂行する。
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Research Products
(7 results)