2013 Fiscal Year Annual Research Report
分子動力学計算を用いて解明するF1-ATPase回転のしくみ
Project/Area Number |
12J07915
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
伊藤 祐子 横浜市立大学, 生命医科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | F1-ATPase / 分子モーター / 分子動力学計算(MD) / 自由エネルギー |
Research Abstract |
回転式モーター蛋白質であるF_1-ATPaseは、ATPase活性をもつβサブユニットの構造変化によって中心軸を回転させている。そのβサブユニットは2つの異なる駆動力により、構造を変化させている。一つは、ATP結合によるもので、もう一つは、ATP加水分解によるものである。前者による構造変化は、すでに明らかにした(Y. Ito et al., JACS 2011)。したがって後者による構造変化を、採用1年目から取り組んできた。このβサブユニットの加水分解による構造変化には、3つの重要な問題が含まれている。1つ目は、1分子実験で存在が実証されているものの、いまだ原子レベルでの構造が解かれていないHalf-Closed構造。2つ目は、ATP加水分解後、生成物であるリン酸がいつ解離するかという問題。3つ目は、もう一つの生成物ADPで、この解離のタイミングは同定されているものの、そのメカニズムについては明らかになっていないことである。 そこで、我々は、アンサンブルサンプリング法(分子動力学、MD計算の一つ)を用いて、その構造変化を実現した。その結果を既存の実験データと比較したところ、シミュレーションで得られた構造変化のパスは、非常に妥当であった。そこで、上に記した3つの重要な問題について、重点的に解析を進めたところ、そのすべてにおいて解を得ることに成功した。得られた結果は、F_1-ATPase研究上、重要かつ新たな情報であり、また、我々の最終目的であるモーター全体の回転機構に対しても、大きな手がかり与える。さらに、その構造変化のメカニズムでは、ATPaseファミリーに共通する2次構造が、構造変化の重要な部分を担っており、F_1-ATPase以外にも、膨大に存在するATPase蛋白質の構造変化について、示唆を与える可能性がある。以上の結果は、学術雑誌へ投稿すべく準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2量体の計算と解析は終了し投稿するだけになっている。さらに、最後の目標である、F1-ATPase全体の構造の計算も終了し、こちらは今年度解析に取り掛かり論文にまとめ上げる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
最終目標のモーター全体の構造変化については、30万原子という膨大な原子数のシステムに対し、すでに2μ秒の平衡MD計算が終了している。これについては、現在データ解析中である。しかし、蛋白質の構造変化は、非常に遅い時間スケールで起こるため2μ秒では、完全に構造変化を追跡できていない可能性もある。そこで、行った平衡MDとは別に、別の手法でも、モーター全体の構造変化に取り組む予定である。
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Research Products
(5 results)