2012 Fiscal Year Annual Research Report
熱機器を可制御負荷として用いた場合の電力系統における電力変動補償に関する検討
Project/Area Number |
12J08093
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
河内 駿介 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 可制御負荷 / 熱機器 / 空調用ヒートポンプ / 給湯用ヒートポンプ / マイクログリッド |
Research Abstract |
商用ビルなどで用いられている熱出力300kW級の空調用ヒートポンプの消費電力を負荷及び再生可能エネルギー電源の電力変動に合わせて制御し、電力変動補償を行う実証試験を実施した。 実証試験は約300~400kWの実負荷とガスエンジン・ニッケル水素電池・空調用ヒートポンプ・太陽光発電設備で構成されているマイクログリッド実証試験設備において行った。 この実証試験の結果、マイクログリッド内の負荷及び太陽光発電設備で発生する電力変動を補償するために必要となる蓄電池のエネルギー容量を空調用ヒートポンプの消費電力を制御することで大幅に削減できることを確認した。今回行った実験のケースにおいては、空調用ヒートポンプを制御した場合と制御しなかった場合で同等の電力変動抑制能力を維持しつつ、蓄電池の必要エネルギー容量を50%以上削減できた。 また、空調用ヒートポンプの消費電力を制御した結果生じるヒートポンプの利用者への影響を評価するために、実証試験時に測定したヒートポンプの熱出力を室温計算モデルに入力し、制御時に発生する室温変動をシミュレーションによって確認した。シミュレーションの結果、空調用ヒートポンプの消費電力を制御した場合でも室温変動は在室者の熱的快適性に影響を与えない程度であることが確認できた。これは建物躯体の熱容量が大きいので、熱出力の短時間の変動は室内温度の変動として顕在化しにくいためと考えられる。 また、家庭用の給湯用ヒートポンプについて効率特性・消費電力指令値に対する実消費電力の応答特性を測定した。効率特性は外気温や消費電力などの条件を様々な値に変化させてヒートポンプの効率を測定した。 これらの測定結果を用いて給湯用ヒートポンプの熱出力特性及び消費電力応答特性の近似モデルを作成した。モデルは外気温及び消費電力指令値の二変数から熱出力及び消費電力が決定されるモデルとなっており、消費電力の動特性は一次遅れ系で近似した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
空調用ヒートポンプを用いた電力変動補償については実機を用いた実証試験を行い、実験によりその効果を確認することに成功した。また、給湯用ヒートポンプについて可制御負荷として用いるために必要な基礎特性を測定し、近似によるモデル化を行った。ただし、物理現象を考慮したモデルについては測定項目がまだ不十分でありモデル化が難航しているため、今後さらなるデータの取得が求められる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、熱機器制御による系統安定化への貢献能力を検証するため上位電力系統のデジタルモデルを作成し、マイクログリッド実証試験設備における空調用ヒートポンプの変動補償制御と組み合わせた試験を行う予定である。この試験では、上位系統モデルのシミュレーションにより系統運用者からのLFC(負荷周波数制御)信号を作成し、マイクログリッドの連系点潮流をこのLFC信号に従って制御する。 また、マイクログリッドにおいて補償すべき電力変動について検討するため、電力変動を周波数成分毎に分割して変動抑制システムの設計を行う手法について検討を行う予定である。
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