2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J08095
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
大串 伸吾 北海道大学, 大学院・農学院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | サクラマス / 種苗放流 / 治山ダム / スリット化 / NEI / ライセンス制 / 遊漁 / マーケティング |
Research Abstract |
本研究のテーマである「北海道におけるサクラマス増殖事業の学際的研究」では、サクラマスの種苗放流事業から国と道が将来的に撤退していく(放流量が減少していく)懸念の中で,この代替処置として漁業者,遊漁者らが期待している治山ダムのスリット化(海と川の連続体再生)によるサクラマス稚魚再生産効果を中心に漁業経済学,生態学的および環境経済学的に評価している。 2012年においては九助川の治山ダムスリット化による増殖効果をUrabe et al(2010)のNEIによる生態学的評価(サクラマス稚魚再生産尾数の推定)を行い,これを種苗放流で行った場合の費用を試算した。 また,増殖対象魚種であるサクラマスが,外国産輸入商材があふれる現代のサケマス市場においてどのような評価がなされているか新規課題としてマーケティングを行っている。この調査と並行し,漁業者が船上活〆によって付加価値を付けたサクラマスに対するニーズの把握を行っている。 つまり,漁業者が要望する川と海の連続性の再生に研究者・行政が応える一方で,漁業者自身がその経営努力を行うことでも種苗放流努力が低下していく現状に対応する余地があるのか,サクラマスの自然再生産と経営努力の双方を考察対象とする論点の拡大が図られた。 2013年度では治山ダムのスリット化による外部経済としての生態系サービスの環境経済学的評価を行い,治山ダムのスリット化事業が公共事業としてより一般性を持つか分析するとともに,この事業を要望した漁業者・遊漁者などの地域住民による意思決定の経緯を整理する。 また,これにあたって研究代表者の環境経済学的技術修練のため仮想トラベルコスト法用いた研究報告をAmerican Fisheries Society Annua/Meetingにて行い,2013年の研究実施に向けた経験・技術を蓄積した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画を拡大して研究が進行しているが,調査努力を引き上げ計画をこなしている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後,人工ふ化増殖事業からが国と道が撤退していく懸念から,種苗放流努力が減少しうる分の補てんを漁家経営策の論点から検討する研究課題と,サクラマスの市場評価をフォローする研究課題の完成度を高める。 治山ダムのスリット化によって,その上流部で期待されるサクラマス稚魚再生産ポテンシャルの他に,他の生物の生息環境の改善が図られる外部経済(生態系サービス)が存在する。これに対する評価を環境経済学の手法で定量化した上で,治山ダムスリット化事業の妥当性を検証する。 このような科学的な根拠と,当該事業を要望する利害関係者(漁業者,遊漁者,一般地域住民)の背景・意思決定を整理し,海と川の連続体を取り戻すことでのサクラマスの天然資源の保全と漁業,種苗放流事業,遊漁の在り方を総合的に考察する。
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Research Products
(4 results)