2012 Fiscal Year Annual Research Report
アブラナ科植物における自家不和合性情報伝達経路の解明
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12J08273
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
伊藤 花菜江 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | アブラナ科植物 / 自家不和合性 / 乳頭細胞 / プロトプラスト / 薬理学的解析 |
Research Abstract |
多くの高等植物は、遺伝的多様性を維持するために、自殖を回避する自家不和合性と呼ばれる機構を有している。本研究で用いるアブラナ科植物の自家不和合性は、雌蕊先端の乳頭細胞で発現する膜貫通型受容体キナーゼSRK (S receptor kinase)と花粉表層タンパク質SP11(S-locus protein 11)の相互作用により引き起こされることがこれまでに明らかとなっている。また、不和合反応時の乳頭細胞内では、アクチンの崩壊、細胞内小器官の構造変化など様々な生理変化が観察されているが、乳頭細胞内で起きるこれらの生理変化がSRKとSP11の相互作用により直接引き起こされているかどうかは不明であった。その理由として、不和合反応を観察するためには乳頭細胞へ花粉の受粉が必須であることが挙げられる。花粉表層にはSP11以外にも多くの低分子タンパク質や脂質などが存在しているため、不和合反応時にみられる生理変化がSP11によるものなのか、それ以外の異なる因子によるものなのかを明らかにすることができなかった。そこで、申請者は乳頭細胞からプロトプラストを作製する新たな実験系の構築を試みた。プロトプラストの利点として、化学合成したSP11を直接処理できることから、SP11単独により不和合反応を引き起こすことが可能であること、さらに、阻害剤などを用いた薬理学実験が可能となることが挙げられる。申請者はプロトプラスト作製に伴い、細胞壁を取り除く酵素の組成、処理時間など様々な条件検討を行った。その結果、特徴的な液胞構造を持った大型のプロトプラストを得ることに成功した。今後は、この乳頭細胞プロトプラストを用いてイオンの流れ、pHの変化などを観察できるような蛍光指示薬を処理し、不和合反応時に乳頭細胞内でどのような変化が引き起こされているのかどうか、解析を進めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
乳頭細胞からプロトプラストを作製することに成功し、新たな実験系を構築することができた。乳頭細胞プロトプラストができたことにより、不和合反応時に引き起こされる様々な生理現象をより詳細に解析できるようになると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで観察されているアクチンの崩壊、細胞内小器官の構造変化などがSP11/SRKの相互作用により直接引き起こされるかどうかを、顕微鏡を用いたライブセルイメージングにより解析を行う。また、不和合反応時に乳頭細胞内で他にどのような変化が引き起こされているか、例えば、pHの変化や、イオンの動向など蛍光指示薬をプロトプラストに取り込ませ、解析を行う。
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