2012 Fiscal Year Annual Research Report
分子デバイス複合化を可能にするπ共役連結ユニットの開発
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12J08731
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
井内 俊文 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | イミダゾール / TICT / π共役 / ビルディングユニット / 複素環式化合物 / 分子内水素結合 |
Research Abstract |
本研究は分子デバイス複合化の実現を目指した屈曲性の有るπ共役ビルディングユニットの提案を行うものである.これまでイミダゾールの共鳴構造を利用したT字型のπ共役分子について光学特性を検討し,スペーサーとしてエチニル基を用いた分子で酸添加によってπ共役がL字からT字に拡張していることを明らかにしてきた.その一方で,光励起状態においてはD(ドナー部位)であるチオフェン部位と,A(アクセプター部位}であるイミダゾリウム部位での電荷移動が発生し,これに起因してねじれを伴った電荷移動発光が観測された.以上の結果を受け,T字分子を垂直方向,水平方向に分割した形状の分子を新たに合成し,その光学特性について評価した.その結果,これらの分子では酸添加によるアクセプター性の向上によってもTICTは起こらないことが判った.特に,垂直方向の直線分子は,D-A構造であるのにも係わらず,酸添加後に蛍光量子収率が増強するという結果を得た.この結果を受け,量子化学計算によりその構造特性,電子状態について検討した.構造最適化の結果,これらの分子は共に酸添加によってチオフェン環の硫黄原子とイミダゾール環の間に分子内水素結合が形成される距離にあることが判った.この結果から,直線でチオフェン環とイミダゾールを連結した分子は酸添加により分子内水素結合が形成され剛直性が増し,結果として無輻射失活が抑制されて蛍光量子収率が向上したと考えられる.その一方でT字分子の場合は左右に共役を拡張した為,電荷が左右に流失し,結果として分子内水素結合が低減し,ねじれやすくなっているのではないかと推測できる.実際これらの分子の回転エネルギーの計算結果もこれを示唆した結果となっている.これらの結果を受け,よりねじれにくい構造設計について現在検討中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度実施計画に基づき,ベンゾイミダゾール誘導体によるT字分子の正電荷導入前後のねじれについて研究を行った.具体的には励起状態のねじれに伴うTICTの発光について参照分子を合成,光学特性を明らかにすることで検討してきた.量子化学計算と併せ,分子内水素結合の程度によりTICTが発生することを明らかにし,後述の論文として報告したので,これを以て達成度はおおむね順調であると評価するものである.
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Strategy for Future Research Activity |
分子内水素結合の効果によるねじれの低減が当初予想していたよりも重要な因子として機能していることを確認した為,ビルディングユニットとして多角的に研究を展開するのではなく,より詳細な光学特性の評価を行いたいと考える.加えて,イミダゾールーチオフェンの架橋部位について更に詳細に研究を行う予定である.当面の計画については,イミダゾールに対してチエノチオフェン,フェニルチオフェン,ベンゾチオフェンなどを連結した分子を合成し,プロトン化前後の挙動について研究を行い,分子内水素結合の効果について検討する.
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Research Products
(6 results)