2012 Fiscal Year Annual Research Report
構成主義的観点からのフッサール志向性理論の意味論的研究
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12J09186
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
富山 豊 北海道大学, 大学院・文学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 哲学 / 現象学 / フッサール / 志向性 |
Research Abstract |
今年度の研究では、それまでの研究の主題であったフッサール初期志向性理論の解明の整理・再検討と並行して、初年度研究計画の予定通り、フッサール中期志向性理論の構造解明を行った。初期志向性理論については、それまでの研究で明らかになっていた志向性理論の基本構造を「実在論」と「反実在論」という観点から捉え直し、この理論がどのような性格をもった理論となっているのかを様々な観点から分析し直すことによって、この理論を新たな視点で見直すことに成功した。具体的には、フッサール初期志向性理論が(a)普遍者ないしイデアールな対象性に関する実在論、(b)知覚対象に関する直接実在論、(c)ダメット的な意味での意味論的実在論、の三点において強い実在論的傾向性を有すること、それにも関わらず、その基本的な精神はむしろダメット的な意味での意味論的反実在論に通じる洞察に貫かれていたことを明らかにした。この成果は、2012年11月の哲学会において発表した。中期志向性理論に関しては、初期志向性理論との対比においてノエマという概念の問題性を指摘しつつ、この問題性を克服するための鍵として、ノエマ概念との緊密な連関の下に地平志向性概念が導入されているこつと、このふたつの概念が初期志向性理論との差異を測る決定的な鍵であることを明らかにした。この成果は、2012年11月の日本現象学会において発表し、この成果が査読を経て同学会『現象学年報』に掲載されることが決定している。さらに、こうした志向性機能の眼目を「経験の進行における組織化機能」という観点から再整理し、2013年1月に北海道大学フィレスセミナーにて発表した。この観点の延長上に、ノエマの規定可能なXを巡る議論を2013年5月の日本哲学会において発表することが決定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、中期志向性理論の解明に見通しをつけることが出来、さらに当初の計画では初年度では困難と思われていた初期志向性理論の再検討に関しても実質的な進展が想定以上に達成されたため。
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Strategy for Future Research Activity |
中期志向性理論の解明によって得られた成果をまとめ、その理論構造の全体像を素描する。その結果を初期志向性理論研究と合わせて、そこに貫かれた洞察とその理論発展において蒙った変容を明らかにする。以上の作業と並行し、研究計画におけるもうひとつの課題であるフッサール初期時間論とのこれら志向性理論の事象的連関を明らかにする作業にも着手する。
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Research Products
(3 results)