2013 Fiscal Year Annual Research Report
構成主義的観点からのフッサール志向性理論の意味論的研究
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12J09186
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
富山 豊 北海道大学, 大学院文学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 哲学 / 現象学 / フッサール / 志向性 |
Research Abstract |
本年度の研究においては、交付申請書に記載した3点の課題のうち、中期志向性理論の構造解明と初期志向性理論のさらなる明晰化に重点を置いた。 中期志向性理論の構造解明については、これまでの初期志向性理論に関する研究を踏まえ、とりわけノエマの概念の意義に注目することによって研究を推し進めた。具体的にはノエマ概念の導入が初期志向性理論と中期志向性理論のあいだにどのような実質的差異を生み出すのか、その導入の眼目は単一の作用に注目した孤立した分析では見出され得ず、より広い具体的な経験連関の中で志向性が果たす動的な組織化機能からその眼目を考察しなければならないことを明らかにし、ノエマが規定可能なXによる同一化機能をもつことによって初期志向性理論における「意味」とも「対象」とも異なるその特異な性格を有していることを解明した。この成果は2013年5月の日本哲学会大会において発表し、2014年発行の『哲学』65号に掲載予定である。この成果に関する相補的な考察として、同一化の機能に正しく着目することなしに意味論的値として考えられた際には、ノエマ概念はいくつかの理論的困難を抱え込むことになること、そしてその際にも、ノエマ概念と地平概念とのある重要な連関を指摘できることを2013年発行の『現象学年報』29号掲載論文において論じた。 また、初期志向性理論のこれまでの研究を踏まえたさらなる明晰化については、それをダメットの分析を用いて現代の実在論-反実在論論争を踏まえた文脈の中に位置づけ、その理論的特徴をより広角的な視点から俯瞰する試みを2013年発行の『哲学雑誌』第128巻第800号掲載論文において展開し、他方それを歴史的な視点からアリストテレス以来の志向性の哲学史の中に位置づけ、その特異な位置と功績の内実を見定める試みを2014年発行の『フッサール研究』第11号掲載論文において展開した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
記載した3点の研究課題のうち中期志向性理論の構造解明と初期志向性理論のさらなる明晰化については十分な進展が得られ、また論文・発表の形で公表することも出来たが、もうひとつの課題であった初期時間論との関連づけに関してはある程度の着想と見通しは得られたものの、論文としてまとめられる成果には到らなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
中期志向性理論および初期志向性理論の基礎的な構造の解明についてはこれまで十分な研究の進展に成功したため、これらを継続しつつ、残る課題である初期時間論との関連づけに重点をおいた研究を行う。
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Research Products
(5 results)