2012 Fiscal Year Annual Research Report
非マルコフ時間領域に現れる励起子揺らぎの四光波混合測定と緩和制御法の研究
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12J09422
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
田原 弘量 東京工業大学, 大学院・理工学研究科(理学系), 特別研究員(DC2) (20765276)
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Keywords | 光物性 / 励起子 / 位相緩和 / 量子ドット |
Research Abstract |
励起子位相緩和の初期には現象論的な位相緩和理論では説明できない緩和形状を示す。本研究では緩和の初期に現れる励起子間相互作用と励起子フォノン相互作用の効果を明らかにすることを目的として研究を行った。 まず励起子間相互作用の影響を明らかにするために、ZnSe薄膜に生成した励起子ポラリトンに対して四光波混合信号のスペクトル変化の測定を行った。遅延時間の増加に伴って変化するスペクトル形状の測定結果を理論計算と比較することで、重い正孔励起子と軽い正孔励起子の励起子間相互作用による励起子ポラリトンの生成過程を明らかにした。 次に多重積層InAs量子ドットを試料に用いて実験を行った。位相緩和の初期形状を解析する前に、まず量子ドット中の励起子状態を明らかにする必要がある。歪みに対する依存性から励起子状態を明らかにするために、量子ドットに加わる歪みが異なる複数の試料に対して四光波混合測定を行った。測定の結果、量子ドットでは励起偏光によって選択される直交した2つの励起子状態が存在することが分かった。これらの2状態間の量子ビートを測定することで励起子の微細構造分裂エネルギーを評価し、さらに励起子分子による量子ビートから励起子分子の束縛エネルギーを評価した。これらの測定から励起子のエネルギー構造を明らかにした。四光波混合信号の励起偏光依存性を測定すると、励起子状態の光学的異方性が観測された。この結果を解析することで、歪みによる重い正孔と軽い正孔の混合強度の変化を明らかにした。 これらの研究によって明らかになった励起子と励起子分子の状態に対して、励起子分子ビートの制御実験を行った。制御の実験では六光波混合法を用い、3つの励起パルスの入射時間を変えることで量子ビートを制御することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度に計画していた研究である「励起子と励起子分子による干渉」について研究を行い、以下の成果を得ることができた。まず量子ドット中の励起子状態について、量子ビートの測定と励起偏光依存性の測定からエネルギー構造と光学的異方性の関係を明らかにした。この研究で明らかにした励起子と励起子分子状態に対して励起子分子ビートの測定を行い、六光波混合法による制御に成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
量子ドット中の励起子と励起子分子について四光波混合信号に与える影響が明らかになったので、次に励起子とフォノンの相互作用について「位相緩和の非マルコフ時間領域」の解析を行う。非マルコフ時間領域の位相緩和形状を四光波混合法によって測定することに加えて、六光波混合法による遅延時間依存性の測定を行う。四光波混合信号に現れる非指数減衰形状からフォノン相互作用のスペクトル分布を解析し、六光波混合信号の測定結果と比較することでフォノン相互作用の持つ時間的な相関を明らかにする。
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Research Products
(5 results)