2013 Fiscal Year Annual Research Report
化学物質の生態リスク評価のための新たな無脊椎モデル生物の確立
Project/Area Number |
12J09538
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
平野 将司 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 特別研究員(PD)
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Keywords | 甲殻類 / 環境化学物質 / 生態毒性 / エクジステロイド |
Research Abstract |
無脊椎動物固有の核内受容体である脱皮ホルモン受容体(EcR)に着目し、EcRを介したシグナル伝達機構を指標として、環境化学物質のリスクを評価する生態毒性試験を確立することを目的とする。本年度は、甲殻類の脱皮ホルモン受容体(EcR)の特性を調べた。昨年度構築したEcR構造モデルから、エクジステロイドや環境化学物質との結合に関与するアミノ酸を予測し、部位特異的変異導入により関係するアミノ酸残基を同定した。また、プルダウンアッセイおよび質量分析計を組み合わせたフォーカスドプロテオミクスの手法を用いて、EcR相互作用タンパク質としてClathrin heavy chain (CHC)を同定し、機能解析を実施した。in vitro転写/翻訳システムでEcRおよびヘテロパートナーのUSPタンパク質をそれぞれ合成し、核抽出物および抗CHC抗体を用いて、ゲルシフトアッセイによってEcR-CHC相互作用を調べたところ、EcR/USP複合体に核抽出物を加え、さらに抗CHC抗体を反応させることでスーパーシフトがみられたことから、EcR/USPダイマーはCHCと直接相互作用し、DNAに結合できるものと考えられた。また、CHCはEcRのC末端側に位置するAF-2ドメインに作用し、EcRを介した転写を促進させることを明らかにした。次に、EcR標的遺伝子を同定するため、次世代シークエンスによるRNA-Seq解析を行い、エクジステロイドによって誘導された網羅的な転写産物の配列情報を取得した。現在のところ、昆虫EcRの標的遺伝子とされるHR3, Broad-complex, E75といった遺伝子のアミホモログの発現誘導が確認できていることから、今後さらに詳細な解析を進め、甲殻類における標的遺伝子の同定に加え、エクジステロイドに対する細胞内の応答を明らかにしていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画では、EcR相互作用タンパク質の同定と機能解析およびEcR標的遺伝子の網羅的解析を重点的に進めることを計画していた。EcR相互作用タンパク質の一つとしてCHCに着目し、機能解析から転写を促進させることを明らかにした。また、トランスクリプトーム解析によるEcR標的遺伝子の探索に着手できたことから、おおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
EcR相互作用タンパク質の一つとしてCHCに着目し、直接相互作用する可能性を示唆したが、CHCは5つのLXXLLモチーフを有しており、どのモチーフがEcRと作用するかの特定には至らなかったため、今後の研究課題としたい。また、トランスクリプトーム解析にっいては、エクジステロイドのみならず、様々な環境化学物質を曝露したアミ類で発現誘導される転写産物の配列情報を取得している。今後さらなる情報解析を進め、これら遺伝子群を各化合物間で比較・分類することで化学物質による海生生物への毒性発現機構について類似点・相違点を明らかにし、生態リスク評価を行う予定である
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[Journal Article] アミDNAマイクロアレイを用いたトリクロサンおよびトリクロカルバンの生態影響評価2013
Author(s)
内田雅也, 三浦苑子, 平野将司, 井口綾子, 山内良子, 吉津伶美, 中村浩, 鏡良弘, 草野輝彦, 古賀実, 有薗幸司
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Journal Title
環境と安全
Volume: 第4巻, 第3号
Pages: 177-183.
DOI
Peer Reviewed
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