2012 Fiscal Year Annual Research Report
反応性カチオン種の制御を指向した非配位性キラルアニオン型ブレンステッド酸の創製
Project/Area Number |
12J09934
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
伊藤 崇希 名古屋大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ホスフェイトイオン / 有機触媒 / 不斉合成 / 有機化学 / 有機合成化学 |
Research Abstract |
本研究は、キラルな非配位性アニオンによる反応性カチオン種の制御を目的とし、イオン間相互作用を鍵とする立体制御法の新しい領域の開拓を目指している。すなわち、反応性カチオン種の発生を担うプロトンとキラルな反応場を提供するキラル非配位性アニオンを持つブレンステッド酸を創製し、その有機分子触媒機能を引き出すことで、従来にない高立体選択的分子変換を成し遂げる。 本研究で取り上げたキラルホスフェイトイオンは完全に新規な化合物であり、類似の構造を持つ化合物もほとんど知られていないことから、研究初年度は設計した化合物の合成に注力した。具体的には、ビナフトールを原料としてO,O,O-型三座配位子を合成し、リン原子の導入法について検討した。種々のリン源および反応条件を用いて、ホスフェイト塩の合成を試みたが、設計した配位子を使ってリン原子を高配位化することが困難であり、所望の骨格を組み上げるには至らなかった。そこで、高配位典型元素化合物についての研究例を参考に、6配位リン原子中心を安定に構築するための配位子構造を探索し、新たなN,N,O-型三座配位子を案出した。また、リン原子導入段階においては、テトラアミノホスホニウムカチオンの合成研究で培った知見を最大限に活かし、段階的にリン原子を高配位化することで目的のホスフェイトイオンの合成を達成した。得られたホスフェイト塩の三次元構造はX線を用いた構造解析により求め、本分子がハイドロジェンホスフェイトの塩化水素錯体として得られたことを明らかにした。また、骨格は異なるものの、本分子は当初設計と同様の2つの三座配位子から成る6配位ホスフェイトイオンを備え、アニオン部周りにキラルなカチオンポケットを備えていることを合わせて確認した。現在、合成したキラルホスフェイト塩のカチオン交換法の確立と、得られたキラル塩の触媒機能の探索に並行して取り組んでいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、過去に例の無い構造を備えたキラルホスフェイト塩を取り上げているため、その構造をいかに組み上げるかという点に最初の困難があった。このため、合成段階に当初の予定以上に時間を割く必要があり、実際の反応開発に着手する時期が遅れることとなった。しかし、年度内に目的のキラルホスフェイト塩の合成を達成することができており、次年度は速やかに触媒機能創出へと軸足を移すことができると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
合成したキラルホスフェイト塩の物理的性質を明らかにするとともに、実際の結合形成反応への適用に取り組む。 反応性カチオン種を生成するために、まずはハイドロジェンホスフェイトの調製法を検討し、ブレンステッド酸触媒系における機能開拓を行う。 また、並行して、反応性カチオン種を発生させ得る種々のカチオンを備えたホスフェイト塩を合成し、各々に特有の触媒機能を創出する。
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