2012 Fiscal Year Annual Research Report
紛争後ルワンダにおける孤児の社会的ネットワークと「家族」の動態
Project/Area Number |
12J09946
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
近藤 有希子 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 「家族」 / 孤児 / 寡婦 / 社会的ネットワーク / 関係性 / 親密さ / 紛争後 |
Research Abstract |
本研究の目的は、紛争後のルワンダ社会に生きる孤児が、みずから築いた社会的ネットワークに依拠して新たな「家族」を創りあげる姿を、孤児の視点から描き出すことにある。 平成23年度までに、調査地であるルワンダ共和国南部州の一農村において、計約2ヵ月間の住み込み調査をおこなった。そこから、ルワンダ農村部では、孤児や寡婦らの「下から」の日常的な実践や、「上から」の政治的な介入の双方によって、家の内部において新しい親密な関係性が構築されていく動態を描きだした。これを博士予備論文(修士論文に相当)として提出し、現在は学会誌に投稿するための加筆・修正をおこなっている。またこの研究をもとに、平成24年度に2件の学会発表をおこなった。 平成24年度は計約4ヵ月間ルワンダに渡航し、これまで滞在していた一農村で継続して調査をおこなった。上述の博士予備論文につづき、家の外へとひろがる孤児らの社会的ネットワークを明らかとするために、人びとの微細な相互行為をひろいあげていくことを目的とした。今回の渡航では、人びとの日常的な食糧の入手方法や、土地や家畜の貸借の実態について調査した。首都においても、「上から」の介入の実態として、孤児や寡婦らの支援をおこなう行政機関や国際援助組織などを訪問し、情報収集を実施した。 また、ルワンダと相似する社会経済構造をもち、同じく大規模な紛争を経験したブルンディ共和国にも2週間ほど滞在した。両国は紛争後の国民統合や開発の過程が極端に異なるが、その社会・政治環境の位相差が、孤児らの社会関係の再構成にどのような相違を生じさせているのかを比較検討することには意義があると考える。今回の渡航では、大学や関係機関を訪問することで、今後の調査に向けた足がかりをつくることができた。 最後に、ルワンダとブルンディの旧宗主国であったベルギー王国にも1週間滞在し、先行研究や古文書の収集をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の前半には、予定していた「日本アフリカ学会」にくわえて他1件の学会発表をおこなうことで、理論的展開の見通しが立った。後半は現地調査に従事し、ルワンダ一農村での継続的な調査を滞りなく実施した。また平成25年度に渡航を予定していた隣国ブルンディにも早期に訪問することで、両国間の社会・政治的環境の相違にかんする知見が得られ、今後の研究にむけた土台づくりをおこなうこともできた。両国の旧宗主国であったベルギーにも滞在し、先行研究等の収集を実施した。平成24年度の現地調査の結果も踏まえながら、博士予備論文(修士論文相当)を投稿論文としてまとめ直す作業もおこなっており、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度までに、紛争後のルワンダの農村社会において、孤児と寡婦が密接に関係してくらしていることが明らかとなった。したがって平成25年度は、これまで調査をつづけたルワンダ一農村において、孤児だけでなく寡婦にも着目しながら、人びとの微細な相互行為をひろいあげていく作業を継続する。また、農村部の包摂からこぼれた結果、都市部に存在する孤児らに対しても、聞き取りや参与観察を実施する。さらに、ブルンディでの現地調査にも時間の許す限り従事し、とくに「上から」の政治的介入の両国の相違にかんして明らかにする。研究を遂行する上での問題点としては、聞き取りや参与観察を実施する際に、ビデオ撮影やICレコーダー等を用いて記録に残す作業は、調査地の社会・政治的な環境上不可能であると考えられたことである。したがってそのような場面では、すべてその場でフィールドノートに書きとることで対応した。
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Research Products
(7 results)