2012 Fiscal Year Annual Research Report
日本における国有鉄道の歴史分析-貨物輸送業務の制度設計と運営を中心に-
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12J10019
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
二階堂 行宣 東京大学, 社会科学研究所, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 国有鉄道 / 鉄道貨物輸送 / 運輸・交通政策 / 業務運営組織 / 官僚制 / 意思決定 / 制度設計 / オーラル・ヒストリー |
Research Abstract |
採用初年度である2012年度は、(1)戦時・復興期を中心とする国有鉄道貨物輸送に関する研究、(2)旧国鉄関係機関における基礎史料の収集、(3)旧日本国有鉄道OB諸氏へのオーラル・ヒストリー実施、の3点を中心に研究活動を行った。 (1)戦時・復興期(1930年代末~1950年代前半)の国鉄貨物輸送業務運営について研究を深め、その成果を刊行した。戦時期に特有な輸送システムへの制度移行過程と、その機能・運営を支える貨車集配システムの存在を実証し、それらの形成に担当部局内の分権的な意思決定構造が大きく影響していたという視角を提示した。また、その視角を鉄道国有化から国鉄分割民営化に至る長期の業務運営へも適用し、その有効性を主張した試論によって、第5回住田物流奨励賞(交通研究協会、2012年11月)を受賞した。 (2)JR各社および関係団体の支援の下、国鉄関係史料所蔵状況の概要を解明すべく、史料調査活動を体系的に開始した。経済史および鉄道技術史研究者と共同で、関係者所蔵の史料群を閲覧するとともに、旧国鉄・運輸省OBの所蔵史料目録作成も並行させた。また、鉄道企業への株式投資の実態を明らかにすべく、地方旧家所蔵文書の出張調査も実施した。それら調査活動の成果の一部を学会(日本技術史教育学会、2013年3月)で報告した。 (3)旧国鉄OBの4名に対して、のべ22回にわたりオーラル・ヒストリーを実施した。調査が完了した1名分の報告書(近刊)には、1940~80年代の国鉄業務運営・運輸政策上重要なトピックを多く含んでおり、基礎史料として将来の研究にも貢献する。その他3名は来年度以降も継続して聞き取りを実施する予定であり、新規候補者数名からも内諾を得ている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
史料調査およびオーラル・ヒストリーの進展により、単に貨物業務の実態を解明することにとどまらず、戦後の日本国有鉄道経営をの内実を総体的に明らかにするための基盤をつくりつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策としては、史料調査およびオーラル・ヒストリーを継続するとともに、それを用いた分析にも注力する。また、データと収集史料の公開を積極的にすすめ、当課題の成果を広く学問研究および一般の検証に資するよう努める。
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Research Products
(3 results)