2012 Fiscal Year Annual Research Report
免疫調節機構における RNA 結合タンパク質 NF45 の生理的機能解析
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12J10665
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
戸高 寛 高知大学, 総合人間自然科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | NF45 / NF90 / RNA結合タンパク質 / TCR / 筋成熟 / miRNA |
Research Abstract |
Nuclear Factor 45 (NF45)は遺伝子の転写調節、mRNAの安定化やmicroRNA(miRNA)生合成制御等に関与することが報告されている。これらの機能を通して、NF45はアレルギー応答に関与するInterleukin(IL)-13及びIL-2の産生を転写もしくは翻訳レベルで促進し、免疫調節への関与が示唆されている。また、IL-13及びIL--2はヒトアレルギー性結膜炎等のTh2型疾患において産生が増加することが報告されている。しかしながら、NF45と免疫疾患との関連性は明らかでない。そこでこの点を解明するため、NF45を過剰発現させたTransgenic(Tg)マウスにアレルギー性結膜炎を誘導して病態解析を行った。その結果、野生型とNF45Tgマウスの炎症度合いに有意な差は観察されなかった。一方、上記の病態解析を進める過程で、NF45TgマウスにてCD8陽性T-cell receptor vβ (TCRvβ)陽性細胞が有意に減少していることが明らかとなった。この結果より、NF45はCD8陽性T細胞の成熟に対し抑制的に働く可能性が示唆された。 これまでに、NF45は結合パートナーであるNuclear Factor 90 (NF90)と複合体(NF45-NF90)を形成し、両タンパク質同士は互いに安定化し合うことが報告されている。従ってNF45及びNF90を共に過剰発現させたマウスは、生体内においてNF45の機能増強が期待される。そこでNF45-NF90Tgマウスを用いて表現型解析を行った結果、このマウスの骨格筋では未成熟な筋繊維が多く存在することが明らかとなった。さらに、この骨格筋において筋成熟に促進的に働く複数のmiRNAが顕著に減少することを見出した。この結果はNF45-NF90複合体がmiRNA産生調節を介し筋成熟制御に関与する可能性を示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
NF45 Tgマウスを用いたアレルギー性結膜炎の誘導実験の過程で、NF45がCD8陽性T細胞の成熟に関与することを見出すことが出来た。さらにNF45-NF90 Tgマウスを用いて表現型解析を行ったところ、NF45-NF90複合体は筋成熟miRNA生合成を抑制することで筋成熟を負に制御することを明らかにした。今回の研究によりNF45が関与する新たな免疫制御機構が存在する可能性を見出すことができ、同時にNF45の結合パートナーであるNF90と協調してmiRNA生合成を抑制することで筋成熟といった生体制御に影響を及ぼすことを見出せた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度NF45 Tgマウスおいて細胞障害性T細胞であるCD8陽性TCRvβ陽性細胞が減少していることが明らかとなった。そこで次年度はNF45 TgマウスにおけるCD8陽性細胞の細胞障害活性を測定する。さらに野生型とNF45 Tgマウスにおいて、サイトカイン産生に変動があるかELISA法により検討を行う予定である。NF45-NF90 Tgマウスについては、NF45-NF90 Tgマウス骨格筋において減少していた筋成熟miRNAの標的mRNAの探索を行う。 探索においてはmiR,NA標的予測データベースであるTarget scanを用い標的mRNAを予測する。さらに予測された因子の発現変動をqRT-PCR及びWestern Blotting法にて野生型と比較検討を行い、NF45-NF90によって産生低下する筋成熟miRNAの標的因子を同定し、NF45-NF90による筋成熟機構の解明に繋げる。
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Research Products
(8 results)