2012 Fiscal Year Annual Research Report
西アフリカにおける建築技術の人類学的研究-モノと人間との相互連関と組織化の分析
Project/Area Number |
12J10767
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
中尾 世治 南山大学, 人文学部, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 西アフリカ / ブルキナファソ / 物質文化 / 土器製作 / 民族考古学 / 鍛冶 / 技術システム / 工程連鎖 |
Research Abstract |
修士論文の内容の発表および論文執筆、現地調査を実施した。現地調査については、本研究は、西アフリカの建築技術を事例として、【モノと人間との相互連関とその集合的な組織化】を解明することを目的としている。当初、マリ共和国でのフィールド・ワークを予定していたが、2012年3月末にクーデターが生じたため、マリ共和国でのフィールド・ワークは断念せざるを得なくなった。そのため、出張者はマリ共和国に隣接するブルキナファソにフィールドを変更した。現地調査では、調査をおこなう村の選定および、調査地の基礎的な情報と技術システムに関する情報の収集を目的とした。 現地調査の内容は、2012年10月から2013年1月まで、ブルキナファソ、ムフン州バレ県において調査をおこなった。本研究は建築技術を主たる対象としているが、調査開始段階では対象を建築技術のみに限定せず、技術がどのように村の成員に配分されているかを村民への聞きとりから明らかにした。シウ村では、鍛冶屋とその配偶者の土器製作者、語り部という内婚制の職能集団が存在している。井戸掘りと建築一般については技術はほぼ全成員に共有されていると考えられ、かつ規模が大きいものであれば共同労働によっておこなわれる。このほかに、ヒョウタン加工、籠製作、糸紡ぎ、機織り、染色、服飾製作は、規範として特定の集団への限定はないが、全成員がおこなっているわけではない。このような技術の配分を考慮し、土器製作を中心として調査をおこない、後半からは鍛冶に対象を拡張した。具体的には、製作作業を直接観察し、その作業を動作単位で記述した。また、親族関係、出身地、学習過程、作業動作の名称、土器器種の名称、それらの価格などの聞きとりをおこなった。これらのほかに、土器、鉄製品、木製品、プラスチック製品、ヒョウタンによる製品、籠などの容器を中心とした人工物についての実測をおこない、それぞれの語彙の収集に努めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初、マリ共和国でのフィールド・ワークを予定していたが、2012年3月末にクーデターが生じたため、当初の計画を変更せざるを得なかった。しかし、ブルキナファソでの現地調査では、調査地を早い段階で決定することができ、調査地に関する基礎的なデータを収集できたことから、概ね順調に進展していると評価することができる。
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Strategy for Future Research Activity |
土着の技術システムを明らかにするためには、内婚制の職能集団に焦点を当てた調査が必要とされる。そのため、本研究では、引き続き、鍛冶屋と土器つくりに注目して研究をすすめていく。留意点としては、アルミの鋳造などの近代化以降の技術の変化が激しい鍛冶屋と比較的変化の少ない土器製作の技術とを対比的に研究していく必要がある。従来の研究では、内婚制の職能集団をその技術の対称性において比較する研究はなかったため、そのような点に考慮して研究を遂行していくことを考えている。
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