2013 Fiscal Year Annual Research Report
西アフリカにおける建築技術についての人類学的研究―モノと人間との相互連関と組織化の分析
Project/Area Number |
12J10767
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
中尾 世治 南山大学, 人文学部, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 西アフリカ / ブルキナファソ / ボボ・ジュラソ / モスク / フランス植民地 / ジハード / ムスリム協会 / 西アフリカ民主連合 |
Research Abstract |
2013年4月~6月までは前年の調査資料をまとめ、学会発表をおこない、2013年6月~2014年1月まで、ブルキナファソのダフィン地方、ボボ・ジュラソでの現地調査を実施した。バレ県のダフィンの村々のモスクの形態、建築技術、歴史に関する情報の収集を目的とした。また、ブルキナファソ、ウエ県のボボ・ジュラソにおいても比較検討を目的として、同様の調査をおこなった。本研究では当初、モスクなどの建築物の技術的側面に焦点をあてる計画であったが、モスクの歴史的コンテクストを現地での聞き取りと史料調査によって先行研究では不十分な点が多くみられたため、研究の焦点を切り換えることとした。 現地調査では、聞き取りと公文書館等における資料調査を行い、(1)ダフィンのイスラーム化の歴史的過程とカランタオのジハード、(2)ダフィンを含むムフン州における植民地期の選挙をめぐる事件群、(3)ボボ・ジュラソのイスラーム化の歴史的過程とムスリム協会の結成当初の活動を主として調査した。特に、ボボ・ジュラソにおいては、集団礼拝をおこなう金曜モスクをめぐって、二つの大モスクのイマームとその周囲が対立していたことが明らかになった。ボボ・ジュラソでは19世紀末に土着民のマラブーが現在のマリのジャに留学した後に大モスクを建てたことがイスラーム化の大きなステップの一つになっていたが、その後、植民地化によって、植民地経済で活躍する商人などが主体となって「近代的な」イスラームが志向され、新たな大モスクを建設していた。特に、後者の集団が西アフリカ民主連合のボボ・ジュラソにおけるパトロンであった人物から後援を受けて、ムスリム協会を設立させている。この事例は植民地化とイスラーム化の葛藤が金曜モスクに具現されていっている点において非常に興味深く、西アフリカのイスラームの近現代とモスクとの関係を考えるうえでこれまでにない視座を提示しうる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画を一部修正したため、その点で計画通りに進展したとはいえないものの、計画の変更によって西アフリカ内陸のイスラームの近現代史とモスクという独自の形態をもったモノとのかかわりを新たな視点で捉えるという視座のもと、ブルキナファソでの聞き取り調査を広範囲に行い、史料調査では首都ワガドゥグの公文書館だけでなく、地方都市であるデドゥグ、ボボ・ジュラソの高等弁務官事務所、ボボ・ジュラソのムスリム協会の個人所有のアーカイブを調査することができ、これらの点において、先行研究には見られない現地調査をすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
仏領オート・ヴォルタは1919年にひとっの領土として成立したが、1932年に仏領スーダン(現マリ)と仏領コート・ディヴォワールに分割され、1947年にふたたび仏領オート・ヴォルタとして再編成された。そのため、旧仏領オート・ヴォルタ(現ブルキナファソ)のフランス植民地時代の行政史料は、フランスのフランス海外公文書館、仏領西アフリカの総督府のあったセネガル、コートディヴォワール、マリの国立公文書館、ブルキナファソの各地に分散して保管されている。こうしたことから、旧仏領オート・ヴォルタ(現ブルキナファソ)のフランス植民地時代の研究は他の地域と比べ立ち遅れているのが現状である。こうしたことから、本年度、フランスのフランス海外公文書館、セネガルなどの国立公文書館での広範な史料調査を計画している。
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