2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J11033
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
原 佑介 立命館大学, 衣笠総合研究機構, 特別研究員(PD)
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Keywords | 小林勝 / 朝鮮 / 植民地主義 / 植民者二世 / 五木寛之 / アルベール・カミュ |
Research Abstract |
本研究は、植民地期朝鮮で生まれ育つか幼少期以降をすごした後日本に引揚げた日本人の戦後文学において故郷がどのように表象されているかを分析し、そこに見られる植民地主義批判の歴史的意義を明らかにしようとするものである。特別研究員PD採用初年度となる平成24年度は、ポストコロニアル文学における小林勝の文学の歴史的意義と世界的普遍性を理論化することを主要目的として研究を遂行した。 小林勝と韓国大統領経験者崔圭夏の植民地期朝鮮における関係を論じた韓国語論文を韓国語雑誌に発表した。韓国の歴史学研究においてもほとんど言及されていない崔圭夏の植民地期の動向の一端を、小林勝の小説作品の分析を通して明らかにした。 小林勝のほか、五木寛之、アルベール・カミュのテキストの比較分析を行なった。世界植民者文学の典型としてのカミュ文学を主要な参照項とすることで、比較植民地文学研究における小林勝ら日本の植民者二世の戦後文学の新たな可能性を提示した。 小林勝の遺族と数次にわたって面談し、聞き取り調査および資料収集を実施し、活字化されていない小林勝の手稿の分析を進めた。ソウル、安東、論山などで小林勝および五木寛之の個別研究のための資料収集を行なった(2012年9月、2013年3月)。次年度に向けて、とりわけ森崎和江、五木寛之、村松武司のテキスト分析を進めた。森崎和江氏と面談し、聞き取り調査を行なった(2012年12月)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
小林勝以外に、森崎和江、村松武司、五木寛之といった朝鮮植民者二世文学の主要な担い手のテキスト分析を進めることができた。とりわけ森崎和江については、本人と会って直接聞き取りを行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は比較文学研究であり、朝鮮植民者二世のみならず、朝鮮以外の植民地で生まれ育った日本人、在日朝鮮人、カミュをはじめとする日本以外の植民者など、複数の文学者のテキストの比較研究を行うが、その中心は小林勝である。採用2年目となる平成25年度は、平成24年9月に審査を通過した博士学位請求論文に大幅な加筆修正を施し、研究史上初となる総合的小林勝論の単著の出版を主要目標とする。また、小林勝とともに朝鮮植民者二世文学者の中心的存在である森崎和江、五木寛之のテキスト分析を初年度に大幅に進めることができたため、次年度は朝鮮以外の植民地で生まれ育った日本人とりわけ安部公房および金石範ら代表的在日朝鮮人文学者のテキスト分析を重点的に行う。
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